ダーク・ファンタジー小説

Re: Amnesia ( No.13 )
日時: 2015/06/03 18:58
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

どのくらい私はそこに突っ立っていたのだろう。

コンコンと誰かがドアをノックする音で気がついた。
「さえか、いるの?」
ノックの主は姉さんだった。

姉さんはすこし開けた扉の隙間から顔だけをひょっこりと出し、部屋の中を見渡した。そして、私の姿を確認すると、ホッとしたように、ふっと吐息を漏らした。

「さえか、いるなら返事をしてよ。何度よんでも、下へ下りてこないから、
いないのかと思ったわ」

姉さんはそういうと、どうしたの?と、わたしに問いかけた。なかなか
感がいい姉だ。

とても心配そうな顔だ。

「何でもないよ。何か用があった?」

姉さんに、よけいな心配をさせたくない。それに、アレはきっと私の見間違いだろう。

「夕飯の支度はしなくていいの?今日の当番はさえかよ?」
「あ」

しまった。今日は、私の番だったのか。すっかり忘れていた。
何を作ろうか。

「姉さん、今日はカレーでいい?」
簡単だし。
「えぇ。なんでもいいわ。じゃ、頑張ってね」

姉さんはそう言うと、下へ下りて行った。

…考え事してる場合じゃない…な。カレー作らなきゃだし。

私は椅子に掛けていたエプロンを手に取り、階下へ下りていった。