ダーク・ファンタジー小説

Re: Amnesia ( No.18 )
日時: 2015/06/01 20:02
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

「翔太。明日は美藤邸に行きますよ」

舞は美藤邸から帰って早々、夕食の準備をしている僕に向かって、そう告げてきた。

『は?今日行ってきたんじゃなかったのかよ?』そう、言おうとした僕の口は、開いたまま、閉じることを忘れていた。
舞が怒っている。

僕の全身の筋肉が強張った。まずい。バレてしまったか。
というのも、実は今朝、舞のお気に入りのマグカップを割ってしまったのだ。
…いや、でもまてよ。もしかしたら、舞は別のことで怒っているのかもしれない。ここで墓穴を掘るほど、僕はバカじゃない。

「何か、あったのか?」

僕は顔が少し青ざめているのが舞にバレていないだろうか、と内心ヒヤヒヤしながら、舞に尋ねた。

「…別に…」
「そ、そう—…」
「ただ」

僕が全てを話し終わらないうちに舞が切り込んできた。

「美藤さんちの妹さん—…さえかさんは私のお友達だから」

舞が無表情で僕に詰め寄ってきた。

「今度は許さないからね?」

自分と同じ顔とは思えないくらい、恐ろしい顔だった。
「…う、うん…」
僕がそう、返事をすると舞は満足そうに口元を歪ませた。

「約束ですよ。ふふ。お腹が空きました。ご飯は何ですか」

無邪気に微笑む、双子の妹——…。
妹は…舞は、独占欲の強い子だ。特に友達のこととなると、異常なほどの執着をみせる。

今回、僕達兄妹だけがこの家に引っ越してきた理由もそこにある。