ダーク・ファンタジー小説

Re: Amnesia ( No.29 )
日時: 2015/06/10 06:44
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

咲ちゃんが真っ赤になりながら、僕にそう、告げてきた。
心なしか、涙目になっている。
どうしようか…。こういうことはあまり慣れていないんだ。

咲ちゃんのことはあまり知らない。
好きでもないのに、付き合ったりするのは何か違う気がした。

舞に助けを求めようと振り返ったが、相変わらずニヤケ顔で、宛にできない。
僕は仕方なく、自分で答えを出すことにした。

「ごめん。君とは…付き合うことは出来ないよ…、ごめん…」

咲ちゃんが、ゆっくりと顔を上げ、僕の姿をとらえた。
咲ちゃんの顔は悲しみと驚きが混ざり合った複雑な顔だった。
咲ちゃんの瞳にだんだんと涙がたまっていく。

咲ちゃんは僕から視線を外すと、再び俯いてしまった。
カーペットにパタパタと、雫が落ちて、丸いシミがいくつもできる。

「…そ、う…ですよね…。ひっく。う…っすみっ、まっ…せっ」

咲ちゃんは必死に謝罪をしてこようとするが、嗚咽が混じってうまく聞き取ることは出来ないよ。

「咲…」

舞が、咲ちゃんの肩をそっと、抱きしめた。
舞は目で僕に部屋から出て行くように指示すると、視線をまた咲ちゃんに戻した。

僕は一瞬だけ躊躇したが、流石にこの場に居続けるのはマズイと思い、舞の部屋を出て、そっと扉を閉めた。

数秒後、咲ちゃんの泣き声が僕の耳に届いた。

後味の悪い思いをしながらも、僕は自分の部屋へ向かった。