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ダーク・ファンタジー小説
- Re: Amnesia ( No.3 )
- 日時: 2015/05/28 19:52
- 名前: のれり (ID: R4l9RSpR)
「静さん…僕のことを覚えていませんか?」
僕はつい、そう口走ってしまった。
こんなこと、今までにはなかった。僕が静さんにこんなことを聞くなんて。
「え…?」
静さんは困ったように顔をしかませる。
すると、静さんは急にふふっ、と笑った。
「いやだ…。翔太くん…それ…ナンパ?」
静さんはくすくすと可愛らしく笑いつづけている。
1.2.3。
きっかり3秒後、静さんの言葉を理解した僕は体中の熱が一気に顔に集待っているような感覚に落ちいった。
「…な…!何を言ってるんですか!?静さん!!やめてけださいよ…!」
僕は赤くなった顔を必死に隠しながら静さんに訴いかけた。
「ふふっ。かわいいのね、翔太くんて…。でも…そうね。たしかに
翔太くんとは初めて会った気がしないわね…」
僕はどきりとした。
静さんが窓の外をみながら、そうささやく横顔が、あまりにも綺麗だったから。
そして、静さんが僕のことを思い出してくれたと思ったから。
でも、そんなことは有り得ない。絶対に。
そんなことが、おこるはずがないんだ。
僕はなんてまぬけなんだろう——......。
どうしてこんな大切なことを、
ぼくは一瞬でも忘れることができたんだろう。
彼女がアムネジア(記憶喪失症)だということを——。
僕が彼女をこんなふうにしてしまったんだ。
今度ばかりは僕の頬を伝う、熱いものを止めることはできなかった。
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