ダーク・ファンタジー小説

Re: Amnesia ( No.32 )
日時: 2015/06/15 22:21
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

「はぁっ、はっ、は…っ」

病院内を走りまわり、やっとのことで集中治療室の前へとたどり着いた。
『治療中』というランプはまだついたままである。

「舞…」

僕がそうつぶやくと、近くの椅子に座っていた女の子が顔を上げた。
その子の目はうさぎのように真っ赤だった。

「翔太さん…」
その子は僕の名前をつぶやくと、顔をくしゃりと歪ませた。
「ごめ…なさい……ごめんなさいっっ」
その女の子は真っ赤に腫れ上がった目を、涙で満たした。下を向いたら、今すぐにでも雫が零れ落ちそうだった。

「君は…?…っそれより…っ舞は!?舞はどうしたんだ!?」
僕が激しくまくし立てると、その子は肩をビクッと跳ね上がらせると、震える声で、話し始めた。

「私が…私が悪いんです…。口論になって、私が、わたしが…舞をっ!」
「…!なにがあったんだ…?」

僕が女の子に詰め寄ろうとしたとき、集中治療室のランプが消え、
ゆっくりと扉が開いた。

僕とその女の子は、ドアから出てきた医師に詰め寄った。

「舞は…妹は…!どうなったんですか!?」
その医師は僕のことを落ち着かせようと、肩にそっと触れ、優しく語りかけた。
「大丈夫。手術は成功だ。だが、今日は目覚めることはないだろう。
数日入院するだろうから、着替えを持ってきてあげなさい。ご両親の連絡先を教えて貰えるかい?」


僕はひと通り医師と話をしたあと待合室へ移動した。もちろん、話を聞くためだ。

話を聞いてわかったことは2つ。1つ目は、この女の子が舞に怪我を負わせた張本人だということ。

そして、2つ目は、この子が舞と揉め合いになり、突き飛ばしたところ、舞が階段から落ちていってしまったのだということ。

僕はこの女の子を責めなかった。
否。責められなかった。
もめあった理由が僕自身の事だったから—…。


翌日、舞は目を覚ました。
でも、舞は見舞に来てくれていた両親を病室から追い出し、僕だけを残した。

舞が何を思っているのか、分からなかった。
舞は僕のことをしっかりと見つめると、突然、話し始めた。

『翔太—…聞いて—…?』 と…。