ダーク・ファンタジー小説
- Re: Amnesia ( No.35 )
- 日時: 2015/06/20 22:04
- 名前: のれり (ID: R4l9RSpR)
舞の声からは必死さが伝わってきた。
僕は無言で頷き、舞に話を促した。
舞は、深く息を吸い込むと僕のことをまっすぐ捉え、
僕にことばの槍を突き刺した。
「翔太。消えてください」
「…………………ぇ…?」
僕の口から吐息混じりの疑問の声が漏れでた。
「あぁ、ちがいますね。言葉が適切ではありませんでしたね」
舞は放心状態の僕の手をとり、強く握りしめた。
「私と一緒に私達を知らない私達も知らない地へ二人で消えましょう?」
舞の言っている意味がわからない。
舞…どうしたんだ…
「意味…わかりませんか…?ふふ、そうですよね…?いきなりこんなこと言われても」
舞は口もとだけを歪ませると、僕に厳しい視線を送ってきた。
「私達は生まれてきたのも一緒。育ってきたのも一緒。顔でさえも一緒。
なのに…翔太は友達がたくさんいて幸せ。
私は友達を翔太にとられて不幸せ。おかしいのよ。これだけが一緒じゃないなんて。だから、ね。私が不幸なとき翔太も不幸であるべき。そして、
翔太が、幸せのとき私は幸せであるべきだと思うの」
舞の声が震えている。
「だから、二人で、二人だけで、やりなおしたいの…。今度は今度こそは…!
友達が…私を見てくれる友達がほしいの…ッ
お願い…翔太…」
舞の目から涙が一筋流れ落ちた。
僕は舞を抱きしめた。舞の体温が触れたところからゆっくりと伝わってくる。
「舞…ごめん…。舞…僕は、舞に…妹に幸せになってほしい」
僕は、舞を抱きしめる腕に力を込めて言った。
「舞。やりなおそう。イチから…二人で。そして、幸せになろう?」
舞は僕にしがみつき声を殺して泣いていた。そっと、舞の短く切りそろえられた髪をなでた。それから、1時間位舞は泣いていた。
そのうち、舞は泣きつかれたのか、寝てしまった。
僕は、舞をベットに横にし、布団をかけた。
そして、僕は病室を後にした。
こうして、僕と舞の幸せを掴むための二人暮しが始まった。