ダーク・ファンタジー小説

Re: Amnesia ( No.43 )
日時: 2015/07/02 19:48
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

視線の先にあったもの。

それは、姉さんと翔太さんだった。

否、姉さんが階段から落ちていくところだった。
姉さんが落ちていくのがとてもスローモーションに見える。

姉さんと一瞬だけ目が合う。その時、私はとっさに叫んでいた。

『…っ姉さんっっ!!』

次の瞬間、ある程度硬度のあるモノが床に叩きつけられる音がする。
私は部屋を飛び出し、翔太さんを押しのけて、姉さんのそばへ駆け寄った。

頭からは信じられないくらいの血液が流れ出していた。
こういう時は動かしてはいけないと聞いた気がする。

どうしようどうしようどうしようどうしよう…!?
姉さんが死んじゃう。家族がいなくなっちゃう。
独りぼっちに—…なっちゃう。

「姉さん…」
自然と、私の手が姉さんに伸びていく。あと、数センチ、というところで私の手は誰かの手によって阻まれた

「…舞…」
舞は私の手を握りしめてきた。
「さえかさん、落ち着いてください。救急車を呼んだので、もうすぐ来ると思います」
「舞…」

私は舞にすがりついた。

舞は病院までずっと付き添ってくれた。
舞はずっと私を励ましてくれた。


翔太さんは青い顔でずっと立ち尽くしていた。