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ダーク・ファンタジー小説
- Re: Amnesia ( No.77 )
- 日時: 2015/07/23 20:04
- 名前: のれり (ID: R4l9RSpR)
就寝前。時計の針は10時を示していた。
僕は家の戸締まりをして、二階の自分の部屋へ上がろうとした時だった。
「プルルルルルプルルルルル…」
リビングの電話がなり響いた。
僕はコール音が鳴り終わらないよう、急いで受話器を手に取った。
「はい…美藤ですが…」
こんな時間に誰だろうか?
「…っ、あ…さ、さえかです…こんな時間に、すみません…」
電話口から弱々しい少女の声が聞こえてきた。
「あぁ、さえかちゃんか…どうしたの?なにか、あった?」
睡魔に半分侵されている頭を必死に動きして、そう聞いてみた。
「…じ…、実は…」
さえかちゃんの声が震えている。何か、あったのだろうか…?
「姉さんが翔太さんのことを…覚えてるみたいなんです…」
「…………え…?ほんとうに———……?」
少し、声が裏返る。
「まだ、確かではないですけど…念の為、明日来てもらっても、大丈夫ですか?」
「もちろん!じゃあ、明日の午後にそっちに行くよ。教えてくれて
ありがとう!それじゃ、おやすみ」
そう言って、受話器を耳から離す。小さな声で、おやすみなさい、という声が聞こえてきた。
僕は、浮足立ってベットに潜り込んだ。今夜は一段と冷え込むらしいが、僕は熱くてたまらなかった。
静さんが思い出してくれたかもしれない。
たったそれだけのことが僕の気持ちをこんなにも弾ませる。
今さっきまでの睡魔はどこへやら。
今日は眠れないことを確信した。
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