ダーク・ファンタジー小説
- Re: Amnesia ( No.86 )
- 日時: 2015/08/01 21:42
- 名前: のれり (ID: R4l9RSpR)
お久しぶりの本編です!
ついに最終章です。それでは、はじめます!
—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—☆—
「静さんっ入りますよ!」
翌日。浮ついた気持ちで、静さんの部屋の扉をノックする。
僕は、中から返事が聞こえるやいなや、扉を開け放った。
静さんは、窓辺の椅子に座り、読書をしていた。
静さんは、本から顔を持ち上げ、僕のことを見た。
静さんの瞳はゆっくりと細められる。
「静さ———…」
「はじめまして。こんにちは?」
…は?『はじめまして』?なんで、そんな初めてあった人に使う言葉を
僕に使うの——…?
「い…や、だな…静さん。冗談はやめてくださいよ」
乾いた笑い声が僕の口からこぼれた。
「さっきから何を言ってるの?貴方は誰なの?」
静さんは訝しげに僕のことを見てくる。
「—…っ!だって、昨日、話したじゃないですか!今日もまた会おうって約束したじゃないですか!」
つい、声を荒らげる。
静さんはビクリと肩を震わせるが、それでも、、抵抗してきた。
「わ…私は、昨日は誰とも会ってないわ!おかしなことを言わないで!」
僕と静さんの声を聞いたさえかちゃんが、部屋に入ってくる。
遅れて舞も入ってきた。
「姉さん、翔太さん!何があったの!?」
さえかちゃんは、目を白黒させながら、僕と静さんを交互に見てくる。
「さえか!この人はいったいだ————…」
静さんがそう言いかけた時だった。
静さんの持っていた本が、静さんの膝から滑り落ち、床にバタリと落ちた。
次いで静さんの身体もぐらりと傾き…床へ倒れこんだ。
「静さん!」「姉さん!?」
僕とさえかちゃんは二人同時に叫び、静さんに駆け寄った。
名前を呼ぶが、返事がない。
「そ…そうだ、救急車…」
「もうしましたよ。あと五分でこっちに着くそうです」
舞は平然として、僕の前にスマホをちらつかせる。
うわ…。あの状況で冷静に対処とか…すごいな…。
兄として、人として、舞に多少の嫉妬を覚えるが、
今は舞に本気で感謝した。