ダーク・ファンタジー小説
- Re: Amnesia ( No.9 )
- 日時: 2015/05/30 17:53
- 名前: のれり (ID: R4l9RSpR)
「さえかー!?」
姉さんが呼んでいる。わたしは自分のへやから出て階段に向かった。
「なぁに?姉さ——」
私は、階段を下りながら姉さんに問いかけようとした。
「——…!?」
私は目を見はった。姉さんよりも、頭一つ分ぐらい高い…人…だろうか…?
なにぶん、髪の先から爪先まで泥だらけなのである。
人かどうかの区別などつけられるはずもなかった。
それに…酷いにおいだ。私は顔をしかめた。
「さえか…この子、庭のあの池に落ちてしまったのよ」
「え、あ…あそこぉ!?」
どうりでひどい匂いだと思った。
庭の池、と言っても、深さはそうない。1メートルかそこらだ。
それに、そう広くもない。
だが汚い。臭い。気味が悪い。ry……これらの理由から私達姉妹はあまりあの池には近ずかないのだが、姉さんの話によると、バシャバシャと池のほうから音がしたので、不思議に思い(汚すぎて鳥さえ近づかないのだ)
近寄ってみるとこの人(?)が池から、はいあがってきていたのだという。
「そうなのよ…。だから、この子をお風呂場まで連れて行ってあげて?」
「…!なんで私が…」
この泥を。 と、言いかけたところで私は、口をつぐんだ。
姉さんは苦笑しながら床を見ていた。床が見るも無残なすがたになっていた。
おそらく、床を掃除するのと、この子を浴室まで連れて行くのでは確実に
後者のほうが楽だと悟った。
「…すみません……」
泥が申し訳無さそうに謝ってきた。以外にも可愛らしい声だ。
私が難色を示したのでそれに対する謝罪だろう。
「…あ…と、とりあえず、こっち、来て」
場の空気が悪くなってしまったかもしれない。
泥の子に、こころの中で謝罪した。
スタスタスタ
ペタベタペタベタ
泥の子はスリッパを履いているのにも関わらず、ベタペタと、泥が床に付着
する音が聞こえてきた。
「さ、ここだよ。服はそこの籠の中にいれておいて。あらっておくから」
「…すみません…ありがとうございます」
私は、そっと脱衣場から抜けだした。
さて、と。次はあの子の洋服を出してあげなくては。せっかく体を綺麗に洗っても、またあの服を着られては元も子もない。私は、姉さんよりも、頭一つ分ぐらい高い。
つまり、わたしと泥の子は同じぐらいの身長のはずだ。服の大きさも大して変わらないだろう。
私は、床の泥と格闘している姉さんを尻目に、階段を駆け上がった。
自室に滑り込み、勢いよくクローゼットを開け放った。
確か、このあたりに……あった。
私は、白いワンピースを手にとった。
義母が買ってくれた、私には不釣り合いのワンピース…。
私は、ワンピースと真新しい下着を胸に抱き、脱衣場に向かった。
私は着替えを置いたあと、姉さんのもとへと向かった。
やはり、泥は手強いらしく、姉さん掃除はまだ、3分の1しか終わっていなかった。
「姉さん…手伝おうか?」
「うぅん?大丈夫よ」
姉さんはにこりと笑って、やんわりと断った。