PR
ダーク・ファンタジー小説
- Re: Amnesia ( No.93 )
- 日時: 2015/08/09 15:14
- 名前: のれり (ID: R4l9RSpR)
ラスト3話です!
今回は静さん視点の番外編です
それではどうぞ!!↓
「ねえ、さえか。私が彼氏を作ったらどうする?」
「へ?」
さえかは食べようと口の近くまで運んでいた焼き魚の身を落とした。
「ふふ、ホラ、こぼしてるわよ」
そっと、ティッシュを差し出した。
「え…ね、姉さん…彼氏……いるの?」
さえかは、受け取ったティッシュで魚を拾いながら、聞いてきた。
目をまんまるにしながら真剣な顔をしているので、つい笑ってしまう。
「ふふ、もう…『作ったら』の話よ?」
「なんだ…いないのかぁ…」
ほぅ、とさえかは息を吐いた。
「あら、いて欲しくないの?」
つい、さえかがかわいくて、いじわるを言ってみる。
「う~…だって、さみしいじゃん…」
……。そうだね、さえか。
「大丈夫よ…私はさえかに寂しい思いはさせないからね」
「な…っ、何言ってるのよ、姉さんっ」
さえかは顔を真っ赤にさせながら、怒ったように頬を膨らませる。
「はいはい、わかっわよ、さえかちゃん!じゃ、ご馳走様!
今日の片付け当番、さえかだからねー♪」
私は、自分の食べた食器を持ち、キッチンへ向かった。
食器に水をかけ、自分の部屋へ駆け込む。
もう、少しで……。
危ないところだった。
部屋の扉を閉めて、座り込む。
とたん、涙が出てきた。
今日も翔太くんに会った。
日に日に、翔太くんのことを好きになる。
好きで好きで、たまらない。
だけど。
さえかに寂しい思いはさせたくない。
お姉さんだから。
たった一人の妹だから。
たった一人の家族だから。
大事な大事な、私の妹——…。
貴女を一人ぼっちにさせるぐらいなら、
私は———
この恋心を忘れるわ。
ごめんね、翔太くん
そして、素敵な恋を—…
ありがとう。
PR