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　この家に起きている人間は一人もいない。ペットは金魚らしいので安心だ。知っているのはそこまで。だが男にとっては充分すぎる。
　どの部屋に誰が寝ているのかは分からない。なので、ひとつひとつ見ていくことにした。
　ひとつめ。書斎、というのには小さすぎるが、デスクや本があるところを見ると、今は出張している父親だろうか。
　ふたつめ。子供部屋だ。色とりどりの女の子用の玩具も、暗闇の中では不気味に見えるだけだ。
　子供は母親と一緒に就寝するのか、ここにはベッドもない。
　はぁ、と息をはきだす。長居をするのはいとわないが、無駄に緊張が長引くのは避けたい。
　一階にはあと居間と浴室、あとはトイレがあるのみ。さすがに風呂にはいっていたり用を足したりはしていないだろうと考え、男は、居間を通り、二階に向かうことにした。