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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.17 )
- 日時: 2015/06/17 22:35
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
今日夜は、糸が切れたように床に崩れ落ちた。気を失ったようだ。頬に涙の跡が残っている。
「あーあ……」
その男は、今日夜を見下して残念そうに呟いた。
「巫が折角プレゼントあげたのに、つまんない」
巫となのった人物(?)のその姿は、すでに今日夜の知る男の姿ではなかった。黒い、ところどころ破けたようなロングコートをゆるく羽織っている。
男か女か、性別はわからない。
つづりと同じくらいの年で、白銀の少し長いストレートの髪の毛を、指でくるくると弄んでいる。
眉目秀麗な顔立ちは、美少年、といったかんじだが、ときどきコートの隙間からみえるきしゃな肩は、幼い少女を連想させる。
その姿もなかなか奇妙ではあるが、なにより不思議なのは、地に足がついていない。ということだ。
浮いている、というよりは、空気に座っている。というほうが正しいかもしれない。
「アイツもそう。暇つぶしにさえならないよなぁ?」
勿論、返答は無い。
巫はすとん、と足を地面につけると、くるり、と一回廻った。
その一秒後には、誰の姿もなかった。いや、一秒もかかっていないかもしれない。
ただ、その存在していた証、とでもいうように、黒い小さな布切れが、そこに落ちていた。
「かじ、み……」
一人部屋にのこされた今日夜は、許しを乞うように、小さく誰かの名前を呟いた。
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