ダーク・ファンタジー小説

Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.18 )
日時: 2015/06/21 19:03
名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)

          *

 今日夜が目覚めた時には、すでに日は高く昇っていて、時刻も昼近くになっていた。
「悪い夢、なのか……?」
 いつもの悪い夢だと、彼はそう思いたかったのかもしれない。
 あの声、あの表情は、全てが現実だというのに。
「……怪物」
 小さく口を動かして、上体を起こした今日夜は言った。
 昔、彼にかけられた暴言。
 あの人に、絶対になってはいけないと言われていた存在。
 少女が、自分と今日夜を表した言葉。
「……なんでゆかにねてるの」
 つづりが起きてきたようで、元は彼の部屋だった寝室から顔を出した。
 いつのまにか力が抜けて、今日夜はまた床に横になってた。
「……なんでもねぇ。悪い夢を見ただけだ」
「そっか。いやだよね、こわいゆめ」
 彼女はそういって、今日夜の寝ていたリビングに入ってきた。
 そして、何かを床から拾い上げた。
「……まっくろでぼろい……ぬの?」
 だが、今日夜がそれを確かめる前に、その布はボロボロと、灰のように崩れ落ちて、床に落ちる前に消えた。
「どうしたんだ?」
「……なんでもない。へんなごみがあっただけ」
 今日夜はその意味すらわからなかったが、彼女がなにもないと言うのなら、と、気にせず立ち上がった。
「……お前に話したいことがーー」
 と、彼が本題を話し出す前に、つづりが言葉を遮った。
「キョウヤおにいさん、しりたいことがあるの」
 彼女の瞳は、まっすぐに、今日夜の目を見ていた。怪物、といわれた彼の、異形の左目を。