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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 月夜にて ( No.2 )
- 日時: 2015/06/10 19:49
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
子供部屋から振り向く瞬間。違和感を感じたのは、その一瞬だった。
ゴトリ、という重い物音。違和感の正体は、人の気配だった。
ありえない、そんなこと、ありえないだろう?と、心の中で反復する。
ドアの隙間……。廊下と居間の間にあるドアの向こうから漂うのは、かぎなれた金属のようなむせかえるにおい。
まごうことなき、血のにおい。
先に誰かが殺しを?……まさか。
この家の者の自殺?……このタイミングで丁度など、ありえないだろう。
諦めて、家を出るという道もある。極度の緊張からくる幻の感覚だろうと、楽観的に考えることも、普段の彼ならできるだろう。
ただ、重い音のつぎにきこえてきたのは、幼い子供の、嗚咽だった。
「今までにないスリルだ」と、半ば無理矢理に感情を転換して、居間へのドアへ手をかける。
一気に濃くなる血のにおい。
「ひぐ……う……っ。ぁう……」
少女の泣き声。
そして、その少女の目の前には、倒れ伏した、血まみれの女性が……。
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