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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.23 )
- 日時: 2015/06/28 12:48
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
僕は、死ぬことも、できないのか。
この世に存在してはいけない化け物のはずなのに、なんたる矛盾。
そこで僕は、ふと、あることに気がついた。
それは、傷が塞がるところまではまだ無理矢理だが理解できる。
でも。
今まで気を失っていた僕を、部屋まではこんできたのは、誰なんだ?
「あっははー、おっかしい。やぁっと気がついたんだね」
軽快な笑い声を発するその人物は、見覚えのある子供だった。
「君を運んだのは、この俺様。お腹空いたから台所いったらさぁ、なんか倒れてるから? そんでーー」
「僕は、そのとき……どうなっていた」
胸の傷痕に触れる。
痛みは、ない。
「あ? 俺様の話を遮るなよなー。……君はねぇ、倒れてたよ。く、はは」
その少年は、笑いを堪えるように、顔を歪めた。
気持ち悪い。
それが僕の感想。
いや、化け物の僕がいえることじゃないが。……なんて、自虐的になって、ムカムカする感情を抑える。
「やっぱりさぁ、君って人間じゃないんだね。その傷、君が倒れてたとき、君の身体からでた黒い糸みたいなので、みるみる塞がってくんだぜぇ?」
黒い、糸?
人間じゃ、ない?
普通の人間とはちがう。そんなことは知っている。僕は化け物で、存在してはいけない怪物で……
でも。
それでも、目はおかしい、歯はケダモノのよう。それだけなんだ。僕は異形っていうだけで……
僕は、どこかで、自分はまだ人間だと、そう思っていたのかも知れない。
見た目が少し違う、ただの人間だと。
その希望は砕け散った。
僕は、正真正銘の、化け物だ。
何かが切れる音がした。
*
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