ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.24 )
- 日時: 2015/06/30 17:10
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
人間の最期なんてあっけない。そんな言葉を聞いたことがある。だが、ここで消えたひとつの命の最期は、筆舌に尽くしがたい、壮絶なものだった。
「……黙れ」
「なにぃ?なぁんか言った?」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて、彼はわざとらしく抑揚をつけて言った。
「黙れって言ってんだよ。聞こえねぇか?」
ドスを効かせた低い声。殺意のこもった暗い響き。
「はぁあ……俺様に向かってそんなこと言っちゃう? 言っちゃうワケェ? 怪物風情がァ?」
そんな脅し、なんとでもないいうように、彼は笑みを消して言葉を放つ。
僕より身長の低い彼は、見下すことはできないけれど、その表情が、声色が、なにより子供らしくない不気味な雰囲気が、言葉にせずとも、「お前は俺様より下等。」と語っている。
「俺は怪物なんかじゃ、ない」
その言葉は、彼に放ったのか、それとも、自分に言い聞かせたのか……
「どっからどーみても怪物………っ!!?」
彼が最後まで言い終わることは無かった。
僕の指が、彼の首に絡み付いた。
「僕は……っ!! 僕は怪物じゃない……!!」
床に押し倒し、馬乗りになって、体重をかけて、手に、力を、込めて……っ。
「が、ふっ」
彼がひとつ、息をはきだした。
まだ死なないのか。
ほら。
早く。
死ねよ。
「やぁっぱり………おまえは、かいぶつ、じゃぁないか」
声が絞り出される。
動かなくなった。
それでもニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
「僕は……なんなんだ?」
手の力を少し緩める。
彼に最後に、答えをききたかった。
「僕は、一体なんなんだよ? 僕は、どうすればいいんだよ?」
彼は、咳き込んでから、そんなことも分からないのか、と心底軽蔑しているように、言った。
「お前は、正真正銘、孤高で孤独な怪物」
そして、小さな手で、僕の左目を覆った。
「何をすればいいか? 簡単だ、中身も怪物になっちまえばいいんだよ。人間様どもに恐怖を植え付け、最期は正義の名の本に処刑されるなんて、最高の物語じゃないか!!」
そして、彼はこの場から逃げようとはせず、嫌らしい笑みを浮かべたまま、己の中指を、噛みきった。
そして、痛がる様子もなく、断面をこちらに向けた。
「ほら、俺様を喰えよ。怪物らしく、残忍にさぁ」
そこからの、俺の記憶は無い。
彼……名は、確か鈍。
彼は死んだのか?
施設内で、行方不明、死んだ、などという話は、一切なかった。
俺は、雰囲気が変わったと、更に気味悪がられたのだが、彼のことは、分からず仕舞いだ。
彼は何者なのか、今の俺には、知る術は無い。
もしかしたら、彼は、俺の唯一の、理解者だったのかもしれない。