ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.25 )
- 日時: 2015/07/02 19:11
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
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「……それで、キョウヤおにいさんは……」
「あぁ、人を殺した」
つづりが言いにくそうにしていたので、代わりに、きっぱりと今日夜が言った。
「でも、おぼえていないんでしょう?」
「……あぁ、確かに覚えてはいない。俺もはじめは、アイツがどっかに行っただけだと思っていた。……思いたかったのかもな。だが、そのあと確信する出来事があった」
つづりは、今日夜が人殺しだと認めたく無いのか、まだ認めることを渋った。
「……でも、キョウヤおにいさん、わたしをたすけてくれた……いいひとだもん」
「……俺が、良い人? ……そんな……、なりえないし、ありえねぇよ」
今日夜は自虐的に吐き捨てた。
「……」
するとつづりは、うつむいて黙ってしまった。
「……すまんな。お前の中の英雄像を崩すつもりはねェんだ。ただ、俺と一緒にいるっていうことは、悪人と一緒にいるってこと……それは伝えておかねぇとって思ったんだ」
今日夜が少し微笑んで言うと、つづりは顔を上げて笑みを浮かべた。
「キョウヤおにいさん、わらった」
今日夜は言葉をつまらせた。というか、照れてフードで顔を隠した。
「……ぅ、うるせぇ……っ」
つづりからすれば、その反応ははじめてで、そして意外だった。
「……えと……わらうのはずかしいの?」
今日夜は背をむけたまま、ぼそっといった。
「……笑ったことを喜ばれるなんて……久しぶりっつーか……」
「そのなの……?」
今日夜が何も言えずにいると、玄関から、来客を知らせるチャイムが鳴った。
「……俺が出る……っ」
逃げるように玄関に向かう今日夜。
つづりはその後ろ姿を見ながら、1つの決意をした。
それは、小さいながらも、強いの決心だ。
『キョウヤおにいさんがひとごろしでも、わたしはずっと一緒にいる。』
彼女と同じ思いを持ち、寄り添った男がいたことを、少女はまだ知らない。
勿論、彼が、思いを果たせなかったことなんて、知るよしも無い。