ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.26 )
- 日時: 2015/07/03 19:54
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
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「今日夜……なぜ屋内でフードを被ってるんだい?」
まぁ屋形邸にやって来る客なんて、この男しかいないのだが。
「……気にすんな。で、何のようだ」
枝暮は少し考えてから、少し自信なさげに言った。
「うぅん……。ダメで元々なのはわかってるだけどね。今日夜、やっぱり、彼女らに会う気は無いかい?」
それを聞いた今日夜はイラだつように乱暴に返した。
「お前さぁ、何回言えばわかんだよ……!? 俺はそんな馴れ合いする気てぇって……!!」
すると、その声に驚いたのか、つづりがヒョコ、とリビングから顔をだした。
「どうしたの……?」
つづりは心配そうにこちらを見つめる。
「やぁ、綴ちゃん!」
「……キタさん、こんにちは」
彼女はまだ枝暮への不信感が抜けていないのか、よそよそしく言った。
「君も今日夜を説得してくれないか?」
そうため息まじりに言う枝暮に、今日夜はキッパリと言った。
「戻ってろ、すぐ帰らせる」
「そんなこと言わずに! 行ってみれば良い連中だって! それに、綴ちゃんだっているんだろう? ならなおさら……」
「なんのはなし?」
自分の名前が出たことに気になったのか、長くなりそうだった彼の話を遮った。
「よくぞ聞いてくれた! いやいやぁ、今日夜もそうだけど、僕たちは、なかなか普通の暮らしに馴染んで生きるっていうのが難しいわけさ! だから、みんなで手をとりあって助けあおうというとある団体があるんだ。それにずっと前から今日夜を勧誘しついるんだけど、なかなか了承を貰えなくてねぇ……今日こそはと思ったんだけど……綴ちゃんも今日夜を説得してくれないかい?」
早口で次々と捲し立てる彼の話を聞いて、つづりはうーん……と唸ってから、今日夜に聞いた。
「……どうしてはいりたくないの?」
「……別に、たいした理由はない。でも、そんなの傷の舐めあいっつーか、ただの馴れ合いだろ? そんなクソくだらねぇ団体は入っても意味ねぇってこと」
心底くだらないというように、今日夜は肩を落として言った。
すると、枝暮がつづりの肩をポン、と軽く叩いた。
「そんなことを言っているが……今日夜は素直じゃないだけなんだよ。ほら、ハリネズミの試練という言葉があるだろ? 人に近づけば近づくほど、仲良くなればなるほど、相手は傷つくと思っているんだ……!!」
「勝手にストーリーつくんなよ」
今日夜は枝暮をこずいた。
「それに、ハリネズミの試練ってなんだよ……ヤマアラシのジレンマだろ」
そうだったかな?ととぼける枝暮を横目につづりは小さく呟いた。
「……わたしはべつに、そういうのもいいとおもうけどな」
それをめざとく聞きつけた枝暮は、ニヤリと笑った。
「ふふふ、決まりだね、今日夜?」
今日夜は呆れたように、大きく息を吐いた。