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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.28 )
- 日時: 2015/07/05 12:42
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
階段をおりると、錆びた扉があった。外界から閉め出されたようなその空間は、ひんやりとした空気が漂っていて、不気味な静寂が漂っている。
常人なら触るのも躊躇うようなその扉を、枝暮は涼しい顔でノックした。
「ここに人なんて住んでるのかよ」
今日夜は怖がる、というよりは気持ち悪がる、というように辺りをみまわした。枝暮が入ろうとしている部屋のほかにも、扉はいくつかあるようだが……。
つづりは、今日夜の手をぎゅっと握りしめた。やはり怖いらしい。
「んだよ、今留守なんじゃねぇか?」
今日夜は無駄足を覚悟したその時、ギィイと軋む音をたたせて、ゆっくりと扉が開いた。
「ぁ、枝暮さんデシタか。こ、こんにちはデス……」
でてきたのは、おおよそこの場には相応しくない、眼鏡の女性だった。
「やぁ、ご無沙汰だね。少し仕事が忙しくて、ね?」
「いえいえ、大丈夫デスよ。あの、それでー……後ろの方々は……?」
枝暮はこちらに振り向き、今日夜たちを紹介した。
「ぁあ、ごめんごめん。こっちは今日夜、前に話した僕の友人さ。そしてこちらは綴ちゃん。今日夜のー……連れだよ」
「変な言い方すんな莫迦」
今日夜は誤解を防ごうと慌てて言った。枝暮の言い方では、まるでペドフィリアだ。
「わ、私はここのオーナーで会長の、継接きりね(ツギハギ キリネ)です。ぇ、えぇと……とりあえずどうぞ、全員はいませんが、大体は揃っているので……」
きりねは扉を大きく開いた。薄暗い室内の様子が明らかになる。
「よし、入ろうか、下靴のままで大丈夫だよ」
つづりはいまだ無言で、今日夜の手を握りしめている。
不気味な雰囲気は今日夜も感じている。だが、そこまで不安がる理由は解せない。
ここで引き返すわけにもいかず、二人はいわれるまま、部屋へと足を踏み入れた。
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