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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.29 )
- 日時: 2015/07/06 18:35
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
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室内ーーいや、店内は淡いオレンジの光で照らされていて、クラシックの音感がながれている。ずいぶんと落ち着いた雰囲気だ。
カウンターに細身の青年が一人。そして、奥のテーブル席に、きりねと同い年、またはそれ以上の、端正な顔だちの女性が座っている。
「こ、ここは、ほとんど一般のお客さんはキ、来マセンから、いつもこんな感じなんデスよ……」
確かに、こんな古いビルの地下なんて、来たがる人はいないだろう。見たところ、看板も無い。
「お客さんを、し、紹介しマスね、常連さんは5人ほどで、きょ、今日は枝暮さんをあわせて、3人デス」
そういうと、きりねはカウンター席の男に声をかけた。男はこちらを一瞥して、ゆっくりと立ち上がった。
彼の顔が、灯りにほのかに照らされる。女性も羨むであろう白い肌、くせ毛の髪は、銀色に染めている。男は少し困ったように、顔を掻いた。真っ赤な爪と透き通るような肌が、コントラストをかもしだして、不気味さの中に、美しさを感じさせる。
「……俺は憑々月詩(ツキヅキ ツキシ)。月詩で良い。一年位ちょっと前からここに通ってる。年は……忘れた」
そういうと、また席に座って、今度は椅子を動かしてこちらを向いた。
「あそこの姉さん、医者なんだ。俺もよく診てもらう」
「医者?」
思わず今日夜は驚きの言葉をもらした。凛とした表情は、女医のそれにみえなくもない。だが、彼女の服装……レースやフリル、そして花をあしらった真っ赤なドレスは、医者だなんて……誰が見ても、わからないだろう。
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