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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 月夜にて ( No.3 )
- 日時: 2015/06/10 20:25
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
ゆっくりと、少女に近づく。
近づくごとに、切られたであろう女性の傷口が、ありありと見えてくる。
子供の力にしては、切れすぎじゃないか、と考える。この惨状を目前に、こんなに冷静に推理できるのも、彼の異常性かもしれない。
体育座りで顔を膝に埋めて肩を震わせる少女。年は…小学生…11、12歳くらいだろうか。玄関にあった靴や、子供部屋の玩具と、少女の年齢は、噛み合わない。
この家……なにかがおかしいと直感する。
少女まで1m強というところで、泣き声が止まった。男に気がついたのだろうか?
数秒してから、バッと振り向く。その顔は、涙でぐちゃぐちゃで、恐怖がうかんでいた。
真夜中、見知らぬ大男がいたら、誰だって驚くだろう。それが、死体の目の前なら、なおさら。
「……け、いさつ……?」
殺人鬼が警察にまちがえられるとは、なんとも皮肉な話だ。
「……ちげぇけど」
少女は体をゆっくり男のほうに向けて、上目づかいで男を見つめた。
「……じゃあ、だれ?」
「だれって……?知る必要は、ねぇよ」
警察では無いと知って、いくらか冷静になったようだ。普通の子供は、なき叫んでもおかしくないこの状況。少女はむしろ男と出会う前より落ち着いたようで、更に異常さを感じる。
「それ、お前がやったのか」
押し黙ってしまった少女に、男から問を投げかけた。
「……うん。おかあさんをころしたのは……わたし」
「なんで」
「おかあさん、おかしいのよ。がっこうにはいかせてくれないし、わたしのこと、にんげんじゃないっていうの」
なきはらした赤い顔で、淡々と語る少女。
片手には、血がべったりとついた大きな包丁が握られていた。
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