ダーク・ファンタジー小説

Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.32 )
日時: 2015/07/12 10:27
名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)

第四章 WIN OR……?

「は……? なん、で……」
 ガタ、と椅子から立ち上がる。店内の客の視線が集まるのがわかる。
「き、今日夜……? 知り合いなのかい?」
 自然と手に力がこもる。じとっとした汗の感触が心地悪い。
「そりゃあびぃっくりだよねぇ、殺したハズの俺様が生きてるんだもん。あはっ」
 こんな状況でも今日夜は、見た目は成長しているが、性格は何も変わっていないんだな。なんてことを考えてしまう。いや、こんな状況だからか?
「たしかに俺様は死んだ。でもさぁ、<死=終わり>とかいう君たちの都合に俺様がつきあうわけないじゃん?」
 つきあいきれないのはお前だ!と叫びたくなるほどの支離滅裂な論理である。
「んだよ、それ……!!?」
「あっははは、殺したい? 今すぐ俺様をやっちまいたいって顔……くは、抗がえない感情、殺意、憎しみ……怪物の君にはぴったり」
 討蜘蛛を……鈍を、睨み付ける。牙を剥き出しにして。その姿は、本当に怪物のようだ。
「あら、お二人……仲がよろしくないのかしらん?」
 能天気な続も、ゆっくり、上品に立ち上がる。
「いくら因縁があろうとも、お客様に失礼な物言いをするのは、美しくないわ。あなたはいつもそう……自覚してますこと?」
 その言葉で、鈍は今日夜から目を逸らし、やれやれというように席につく。
「わーかってますって、咲ノ城さん。ちょっと懐かしかっただけです」
「……っ」
 今日夜にしては、拍子抜けである。
「え、えぇえと……だ、大丈夫デス、か?」
 きりねはすっかりこの状況に怯えてしまっている。
「あー、うん。ごめんねマスター」
「で、では改めマシて……私は継接きりね、この喫茶店の店主でデス。そして、このお店をつくった理由でもあるのデスが……」
 そこで一回息を吐いてーー
「恥ずかしながら、私、こうみえて、ネクロフィリア、というやつデシテ……」
 ニコニコとしたその表情からは想像できない、とんでもない性質を、彼女は隠し持っていたのだった。