ダーク・ファンタジー小説

Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.36 )
日時: 2015/07/21 16:39
名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)

          *

 枝暮が地下に戻ると、続ときりね、月詩の姿は無く、今日夜、つづりのみが座っていた。
「やっと帰ってきたか」
「……おかえりなさい」
「皆、もう帰ったかい?」
 四人だけになると、店内が広く感じる。
「あぁ」
「では、僕らも失礼するかな」
 今日夜は、そうだな、と言って、席をたった。つづりも椅子から降りる。
「ねえ……今日夜くーん? お前に言いたいことがあるんだけどー……聞くよな?」
 鈍が三人を呼び止める。
「あ? んだよ」
 今日夜はあからさまに不機嫌だ。
 枝暮はバツが悪そうに下を向いた。
「今日夜くんはさ、不思議に思ってないのォ? 人狼……つづりちゃんにお前の過去の一片を話したのに、俺様の名前を聞いても、なんの反応もしないこと」
「……そりゃあ……って、なんでてめぇがそのことを知ってるんだよ」
 鈍はおっと、と口を押さえた。
「あは、気にすんなよ、んなこまけーことはさァ。で、本当のところどうなんだよ、つづりちゃん? 俺様のことを知ったのは、これが初めて?」
 つづりは今日夜の後ろに隠れていた。そこから少し顔を出して、小さい声で応える。
「はじめて……このおみせにきてからしった……よ?」
「な……っ!?」
 今日夜はバッと振り向いて問い詰めた。
「んなわけ……! ここに来る前、話しただろ?!」
「ぇ、えぇと……その……むかしのおはなしはおぼえてるけど……」
 鈍と枝暮はその様子を黙って見守っている。鈍はニヤけながら、枝暮は額に汗を浮かべて、だが。
「それで、いってたのは……にび、さん? じゃなくて……その、たしか、か、かん、なぎ……?」
「は、はぁ……? 誰だよそれ……」
 そう困惑の声を漏らす今日夜。
 次の瞬間、枝暮が崩れ落ち、膝をついた。
「巫、だって……?!」
「枝暮くん……これが、正常に[計画]が進んでる証拠……」
 鈍はそういって、バサ、と腰に巻いていたコートを羽織って、フードを被った。
「……俺様が全て終わらせてやるよ。ねぇ、今日夜くん。そろそろお前も気づいたほうが良い。すぐそこに、終焉は迫ってるんだから」
 くるり、と彼が一回廻ると、そこにもう、人影は無かった。