ダーク・ファンタジー小説

Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.40 )
日時: 2015/08/29 22:51
名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)

「さ、どうぞ」
 彼……紫灯は笑って俺を家に招き入れた。中は中々に広い。
「疲れただろうし、屋形くんは休んでて? お昼ご飯つくるから」
「あ、はい」
 紫灯はキッチンに向かうと、青いエプロンをしめた。
 材料を切ったり器具を用意するその姿は手慣れていて……かなりうまいのだと思う。料理している姿なんてのはあまり見たことがなかったのでわからないが。
「ぇ、えへへ……なんか、照れちゃうなぁ……」
「ぁ、すみません」
 少し、じっと見すぎたようだ。
「いや……大丈夫だよ」
 紫灯はまた微笑んだ。
 少しすると料理が出来上がった。
「できたよ……簡単なのだけど……」
 焼きそばのようだ。ソースの良い香りがする。
「じゃ、いただきます」
「……いただきます」
 思えば、誰かと食事をするなんて、久しぶりだった。
 というか、こんなに人と親しく話すなんていうのも、暫くしていなかった。
「……うまいです」
「えへへ、良かった」
 この人は本当によく笑う。それも、自然に、優しく。
 今まで俺に向けられた笑顔なんてものは、嘲笑か、ひきつった無理矢理なものだけだった。