ダーク・ファンタジー小説

Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.45 )
日時: 2015/09/23 08:51
名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)

「……え?」
「だから、さ……人間だろ?」
 少年がこちらを向いた。やはり、泣いていた。
「……人間じゃないのは、俺なんだ。俺みたいなのを化け物っていうんだ。見た目がこうってだけじゃない……誰にも愛されない、愛されようともしない。父親も母親も……家族のことなんて覚えてすらいない。それどころか、一人殺していて……そのことさえハッキリとはしてない。確かに、この手で、殺したのに」
 いつの間にか、俺は顔をあげていた。見られてるなんて、気にしなかった。
「いつからーーいつから独りなのか? こうなることは決まっていたのか?」
 そんなことをずっと思ってても、答えが出るはずないのに、空虚な自分に、静かな公園に、問いかけた。いや、今までも、ずっと問い続けていたのか?
「……生きていてはいけないのに、死ぬことも許されない……居場所なんて、ない。それが、化け物なんだ。俺が……化け物なんだ」
 こんなことをいって、少年の救いになるのだろうか?
 化け物の言うことは所詮盲言だ。
 そう、いわれたことがある。これも、ただの自己満足なのだろうか。
 ……でも、今はそれでもいい。
 この少年を……自分を人間じゃないという少年を、人を殺して……食らって泣けるこの少年を、自分のようにしたくない。
 この世界に生まれ、愛されず、人を殺し、愛すと言った人間でさえ信じられない、そんな全ての罪を負ってまで泣けないのに、優しい言葉1つで泣いてしまう……そんな気持ちの悪い、醜悪な化け物に、この俺みたいな化け物にしたくなかったのだ。
「お前は、まちがいなく人間だよ。優しい人間だ」
 俺は、何時ぶりか分からない、笑みを浮かべた。