ダーク・ファンタジー小説

Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜復旧 ( No.46 )
日時: 2016/01/05 13:30
名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)

 少年はうつむいたまま小さく「ありがとう」と言った。その声は震えていて、拳を膝の上でぎゅっと握っていた。
「……こんな言葉をかけてやるんなら、俺じゃない方が良かったよな」
 そう言って俺は立ち上がる。__少し、後悔した。
 もう俺がすることは無い、この場を立ち去ろう。自分がこんなことを言うなんて、思い上がりにも程があった。
「……ん」
 ここを離れて、野垂れ死のうか、俺が死ぬことは、できないかもしれないけれど。そんなことを思って、歩こうとしたとき、服の裾がひかれた。

「傍に……いてくれないかな」

「……!」

 一瞬にいることを望まれる……そんな経験は、2度目だった。今日1日で、二回も……まるで、別の生物に……それこそ『人間』になったかのようだ。ありえない。こんなこと、ありえないのに。
「俺は……俺は、人に望まれるような……っ」
 そうするか、迷いながらも振り向いた先にいた少年は、泣きながら、弱々しく笑顔を浮かべていた。
「今一人になったら……この夜にのまれてしまいそうなんだ。君じゃないと……君がいてくれないと、僕は……壊れてしまいそうだ」
 俺の服を今だ掴む少年の手は、赤黒い血にまみれていた。