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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜復旧 ( No.49 )
- 日時: 2016/01/06 21:55
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
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第5章 BLUE LIRY
枝暮は無言で自分の家へと……今日夜の家からさほど遠くない、アパートへと戻る。
美しい夕暮れの光は、枝暮の家も例外なく照らしていた。しかし枝暮は、その光を煩わしいというように、自分にはこんな明るい光景必要ないというように、勢いよくカーテンをしめた。
「……クソ……っ、クソが……っ」
床に崩れ落ちるように座りこんで、天井を見上げる。白い無機質なそれを見ていると、自分の汚い部分がつきつけられるような気がして、直ぐに下を向いて目を閉じた。
そこに、今日夜に見せていた明るい笑顔は、面影さえも無かった。
彼は知っている。今日夜の過去を……討蜘蛛姉弟がしようとしていることも、[計画]とは何かも。そして、今日夜が人狼の少女と居れば、[計画]は進むばかりだと。奴らの思惑どおりになってしまうと__
それでも、彼は二人を引き離すことができなかった。
今日夜が少女や店の面々に見せた感情……心配や照れ、思いやり、優しさ。自分にはみせなかった、『人間』らしい表情……
いくら彼と共に過ごしていても、自分と彼の間には、決定的な違いが、乗り越えられない壁が、深い深い溝があった。
彼が救われるのなら、あの日僕を救った彼が幸せになれるなら、どんな方法でも使おう。いくらでも彼に嫌われよう、憎まれよう__それでも良いと思っていた。
でも、枝暮はできなかった。無理矢理にでも、手を血に汚してでも人狼と引き離すと、心に決めていたことなのに。
彼は、[計画]の上で踊らされていた方が、幸せなのか?枝暮の脳裏に、そんな思いが次々に浮かんだ。
「違う__こんなのは僕の汚いエゴだ。自分の手を汚すことを、自分が苦しむことを恐れた僕の……」
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