ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜復旧 ( No.54 )
- 日時: 2016/01/13 18:04
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
続はゆっくりと、湯気のたつ珈琲を口に含んだ。そして、浮かない表情のまま、話し始めた。
「……皆さんに相談したいことなのですが……」
今日夜は不穏な空気を感じた。続のこの様子からして、かなり重大なことなのだろう。
「継接さんが行方不明で……」
マスターが?と月詩は思う。彼は今日夜たちが店に訪れた日以降、1週間と4日、ずっとこのアトリエに籠っていたため、彼女の姿を見ていない。彼女とは長年の付き合いにはなるが、連絡先もなにも知らないため、プライベートでの交流も無かった。
「お店は開いていないし、お家にもいらっしゃらなくて……電話をかけてもつながらないし、メールにも出ないんですの」
続は、きりねと定期的に連絡をとり、予定があったときは一緒に出かけるような間柄だった。
彼女が長期店を休むことは以前にも1回あったのだが、今回のようになんの知らせもなくでは無かった。彼女は人との繋がりを大切にして、そして心配させたり迷惑をかけたりしないようにする真面目な性格だということを、続はよく知っていた。そのため、彼女が何の音沙汰もなく消息をたったことを、続はとても心配している。
「俺はずっとここにいたからな……この前お店にいった時も、特に何も言ってなかったし……」
「私も何も聞いていませんわ……」
二人は、なすすべがない、という様子だ。続ほどきりねと交流がない月詩だが、今回のことは驚きを隠せない。
「……そういやぁ」
黙って聞いていた今日夜が口を開いた。三人の視線が集まった。
「あ、いや……大したことじゃねぇんだけど……」
注目されている慣れない感覚に、今日夜は言葉を詰まらせる。
「店にお邪魔したあの日から、アイツ……枝暮、見てねぇなって思って」
「あれ、2人ってそんな親しいの?」
月詩は意外だというように首をかしげた。この前の様子を見る限り、友人なんだろうなとは思ったが、正直2人は正反対のような性格だと思ったし、店で枝暮の口から今日夜の話題が出たことはなかったからだ。
「いや、親しいっつーか……アイツがほぼ毎日のように俺ん家におしかけてくるだけだけど……おかしいとは思ったけど、アイツは職持ちだし静かなことにこしたことなねーなと思ってそんな気にしてなかった」
「そういえばなんか様子おかしかったっけ……」
月詩は二人の関係性や、色々な可能性を脳内で探ってみたが、何も思い浮かばなかった。