ダーク・ファンタジー小説

Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜復旧 ( No.56 )
日時: 2016/01/18 18:24
名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)

「では……手分けします? 私は來さんのお家が分からないし……鮮火さんを屋形さんから離すわけにはいけませんし……私と憑々さんで書店へ、屋形さんと鮮火さんで來さんのご自宅へ、で、どうかしら?」
 続の提案に、今日夜は、依存もなく頷いた。続が言っていた理由も勿論あるのだが、今日夜は駅前などという人通りの多い場所にはでたくなかったからだ。
 それを見て、綴も同調した。二人の様子に、続は満足げに微笑んだ。ただ一人月詩だけが、取り残されたように、返事もできず、模型のように、それこそ人形のように固まっていた。
「……え」
「あら、憑々さん、何か問題がおありで?」
 そう隣で尋ねる麗しの君、続の色素の薄い両の瞳に見つめられ、慌てて月詩はいつもの妖艶な微笑を浮かべた。心の中では、かなり動揺したまま。
「え……? いや、ないよ。全然、大丈夫」
 これは決してデートなんかじゃない。ただ、2人で話を聞くか、通勤の有無を確認するか……ともかく、マスター失踪の手掛かりを見つけにいくだけ。というか、こんなことで喜ぶなんて、不謹慎すぎる……!……そう思いながらも、月詩は高揚する自分を押さえきれなかった。
「……んじゃ、いくか」
 そんな月詩の心中を露知らず、今日夜は残っていたコーヒーを飲み干した。そして口を拭ったあと、あ、そうだ、と呟いた。
「……確認したあと、報告する場所、必要だよな、ぇえと、月詩……ここで良いのか?」
「……え? ぁ、あぁ良いよ、全然……うん」
「ツキシおにいさん、だいじょいぶ?」
「……あはは、大丈夫……」
 月詩の反応がおかしいことは3人の目にも明らかたったが、本人が大丈夫だからというので、特に追求はせず、続の「では、いきましょうか」を合図に、全員が立ち上がった。

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