ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜復旧 ( No.61 )
- 日時: 2016/02/06 14:19
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
時は枝暮を探しに二手に別れた後に戻る。
枝暮の職場、駅前にある『鼓丘[ツヅミオカ]書店』に向かった続と月詩。二人とも内面は普通の人間とは違うのだが、今日夜や綴とは違って、外見は周りとなんら変わりないため、人が多い駅前も、難なく歩くことができる。続の人選は、それも配慮にいれてのことだった。
「憑々さんは、読書はお好きかしら?」
「……まぁ、たしなむ程度には好むかな」
そんな何気ない会話を交わすも、月詩はどこか心ここにあらずで、周りを窺っては落ち着きのない表情をしていた。彼をそうさせているのは、周りの人々の視線と、聞こえてくる声だった。
「あの人たちすごい綺麗、日本人じゃないみたい」外回りの会社員たちがそう話していると思えば、すれ違った男子学生の集団が、「お似合いカップルじゃね?」と、声の音量も気にせずに、バリバリこちらに聞こえる声で言ってくる。
続は確かにカジュアルで不自然ではないが、街ではあまり見かけない華やかな格好ではあるし、月詩も月詩で、帽子、コート、スキニーパンツと、黒系統の服装が多いものの、本人の妖艶な白肌とのコントラストは、見るものの目を惹き付けた。
幸い、続には自分たちのことだと気づいていない、もしくは気にしていないらしかったが、月詩にとって想い人とそのような関係に見られるのは勿論本意ではなく緊張と恐れ多い以外のなにものでもなかった。いつもの微笑を浮かべる余裕をもつことさえもギリギリだった。
*
「うーん……見当たらないみたいだね」
「そうですわねぇ……」
店内は時間のこともあってか空いていて、月詩はホッと一安心、店内を二人で一巡りしたのだが、枝暮の姿は見当たらなかった。
「店員さんに聞いてましょうか?」
「そう、だね……それが一番手っ取り早い」
月詩が同意すると、続は近くにいた、しゃがんで本の整頓と補充をしている女性の店員に声をかけた。
「はい、何でしょう?」
明るく返事をした彼女は、長い髪をポニーテールで1つに結っていて、口から少しのぞく八重歯が特徴的だった。
「お聞きしたいのですけれど、來 枝暮さんはいらっしゃいます?」
「枝暮さんは……」
店員の顔が少し曇った。少しの間のあと、遠慮がちに言う。
「……枝暮さんは、無断欠勤が続いていて……」
それを聞いて、続と月詩は顔を見合わせた。悪い予感が的中したようで、嫌な暗い気持ちが胸中に広がる。
「そう……うん、ありがとうございます」
月詩がそういうと、店員は、お力になれず申し訳ありません、と頭を下げて、仕事に戻った。
「……何処にいってしまったのかしら」
「今日夜くんの方で見つかると良いけど」
釈然としない気持ちのまま、何の情報も得られずに、二人は書店を後にした。
*