ダーク・ファンタジー小説
- Re: 影舞う月夜に君想う〜What a ugly beast〜 ( No.9 )
- 日時: 2015/06/13 13:16
- 名前: RINBYO (ID: jV4BqHMK)
醜い化け物か。
それともーー
「俺は、屋形 今日夜(ヤカタ キョウヤ)。なんとでも呼んでいい。」
「えぇと、じゃあ、キョウヤおにいさん。……わたしは、あざか、つづり」
よくわからないけど、あざやかに、あつい『ひ』に、かくっていうつづり?
と、少女は説明した。
鮮火 綴、だろう。
「キョウヤおにいさんは、おうちあるの?」
「ちいさいけど、アパートに住んでる」
「わたし、ここにいたくない。こわいから……」
今日夜はすこし考えた。
「部屋は余ってるから、お前ひとりなら、大丈夫だろう」
「さかなは?」
さかな。
金魚のことか?
「金魚くらいなら、いいんじゃないか」
すると、綴は、パァアと効果音がつきそうなほど、顔を明るくして、笑顔をうかべた。
今日夜にとっては、はじめてみる、嬉しそうな顔だ。
それほど大事にしているのだろうか。
「じゃあ、もってくるねっ。キョウヤおにいさん、準備してて!」
「ぁ、あぁ……」
準備といえば、証拠隠滅くらいなのだが。
つづりは子供部屋へとかけていった。
包丁をしっかり洗って、床におちた雨の雫を拭き取る。
そういえば、父親は出張という話だったが、出かける前に殺したのだろうか。
「ま、どうでもいいか」
ひととおり後始末をおえ、部屋を見渡す。
すると、バラバラになったネックレスが、棚の上においてあることにきづいた。
母親のものだろうか。
だとしたら、形見、になるんじゃないか?と今日夜は首をかしげる。
「なおせねぇことはないよなぁ」
「もってきた!」
慌ただしくつづりが、水のはいった、10cm四方くらいの水槽に入った、ちいさな黒い出目金をもってきた。
「あー……落とすなよ?」
大きく頷いて、ぎゅっと、より一層だいじそうにもった。
ネックレスのことも気になったが、辺りに日の光が満ちてきた。
これ以上長居はまずい。
「よし、いくぞ」
「ま、まって……!!」
綴は金魚を机において、手袋をはめていた。
それをみて、今日夜もフードを深くかぶりなおす。
「くつ、おかあさんのはいていこう……」
玄関まで歩いていく。
浴室の前を通ったが、つづりは振り向かなかった。
警戒しながら扉をあける。
キィイ、と扉が軋んだ。
もう、音は消えていかない。
雨はいつのまにかやんでいて、美しい朝焼けがひろがっていた……。