ダーク・ファンタジー小説

Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.31 )
日時: 2015/12/05 12:47
名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: iUqSgUfr)

「じゃあ、夏芽はどうなのよ?意見は?」
私が不機嫌そうに聞くと、夏芽は淡々と答える。
「簡単だろ。料理にだって、体を暖めたりだってできる」


「なるほどねえ…じゃあ、それをレポートに書こう!」
私たちは、授業後に提出するためのレポートを書くことにした。


「あっ!おい、レアノも考えろよ!?」
「分かってるって。それじゃ、私書くから、夏芽はどんどん言って!!」
「…俺に全部考えさせる気マンマンじゃねえか…」


* * *

放課後、私はホウキを練習をしに、寮の中庭に出た。
前回と同じ場所だ。
今日はザストもエステマちゃんも都合が悪いので、一人で練習。
なんだか寂しいけど、気を引き締めて、精神を集中させる。


「フライト!」


…なにも起こらない。
このままじゃ私の『そらをとぶ』は『はねる』と同じ効果になってしまう…!


…でも、やっぱり難しいんだな。
昨日までの暖かい日差しとは違う、冷たい風が私の身体を打ち付ける。
中庭の桜の花びらが散っていく所を、私はただ見ていた。


儚くて、美しい。
中庭には、一つの大きな桜の木の他、花壇にチューリップも咲いている。
色とりどりの木や花を見ていると、自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。


「今日はもう、やめよう…」


どうせ、飛べないんだから。



* * *

「今日は、実際に魔法を使う練習をしましょう!」
あれから昨日は、そのままベッドに寝転がり寝てしまった。
当然、飛べるようにはなっていない。
憂鬱な気分だ。


「レアノさんっ!」
顔を上げると、そこにはミカ先生がいた。
「今日もグループ活動なので、移動してね。で、レアノさんは、まずこれを練習してて」
古い本の一ページを指し、ミカ先生は美しい笑顔を魅せた。


「あ、おい、レアノ。俺もそれ練習するから。ちょっと見せろ」
炎科に移動すると、夏芽が本を取り、机に見やすいように置いた。
「えーと、炎科の奴等が最初に覚える魔法か。呪文は…」


私はなんとなく、周りを見渡してみた。
皆一生懸命に練習し、中には出来ている人も居て、笑顔をみせている。
いいなあ、うらやましい。


「フレイム!!」


その声に振り向くと、夏芽の手のひらには、赤い炎が現れていた。
「よっしゃあ!出来た!おいレアノ、俺、出来たぜ!!!」
夏芽は、満面の笑みをみせている。


私は、手を固く握りしめた。
悔しいような、うらやましいような。
モヤモヤとした気持ちが、私の心の中で叫んでいた。