ダーク・ファンタジー小説

Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.51 )
日時: 2016/01/29 22:10
名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: R1HrIXSx)

私はすぐさまレスターに駆け寄った。
レスターは眠るように目を瞑っていて。
私の目の奥から、大きな水の粒たちがこぼれ落ちていく。


レスターがこんな状態になるまで、私は気付いて無かった。
話に夢中になってて、全然気付かなかった。
私は、馬鹿だ。


私の頬をつたった雫たちが、レスターの頬に落ちていく。
レスターのたくさんの傷を、痛みを、少しでも減らせたら。
私は彼の手を握り、か細い声で彼の名前を呼んだ。


「やっぱり、彼の特別な女性は君って事かな?」
ロイスはそう言い、見下したように笑った。
「…アンタのせいだ。アンタのせいで、レスターは、死…!!」


その時、握っていた手に、きつく握り返された。
少しの痛みと、驚きと、嬉しさと。
すべてがあふれて、また涙が出てきた。


「人はそう簡単には死なないよ。特に、僕みたいな奴はね」
彼はそう言いながら、ゆっくりと体を起こす。
「…ごめん、強く握りすぎた。痛かったよね?」
照れくさそうに笑って手を緩める。


でも私は、それがなんだか悲しくて。
「…痛くなかった。レスターの傷に比べたら、全然」
レスターの手を、力いっぱい握った。


レスターは困ったように笑うと、手を握っていない方の手で、私の頭をなでた。
「俺は、ロイスに勝つよ」
そして痛々しい傷を感じさせない、凛々しい顔で立ちあがった。


「君の戦い方はだいたい分かった。今度は僕の番だ」
レスターが攻撃を仕掛けようとした、その時。


「その勝負は、もう終わりだよ」


バルシェ先生だった。
教室に足を踏み入れ、二人の王子に近づいていく。
ロイスとどこか似た雰囲気を持った美しい顔立ちが、二人を睨む。


「…大きな音がしたと思ったら。校内での勝手な戦闘は校則違反って知ってるよな?」
ため息をつき、レスターの方を見た。
「君は医務室に行きなさい。…君、一緒に行ってやりなさい」
バルシェ先生は、私の方を見た。


続いて、バルシェ先生はロイスを見た。
「…君は私と一緒に、学長の所に行くぞ」
そう言ってロイスの腕を掴むと、強引に連れ出していった。


教室内はざわついて、ぽつぽつと人が帰り始めた。
紅花ちゃんも帰り、私とレスターの二人だけになった。
私の心も落ち着いてきて、涙も乾いた。


「レスター、医務室行こうか」
静かになった教室に、声が響く。
「…そうだね」

彼の声も響いて、私は途端に安心した。