ダーク・ファンタジー小説

Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.52 )
日時: 2016/02/05 22:15
名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: VKUUDnij)

会議室を出てから今まで、お互い一言も言葉を交わさなかった。
なんて声をかければいいのか、分からなかったから。
さっきの自分を思い出すたびに、恥ずかしさがこみ上げてくる。


レスターが傷だらけで倒れて、頭の中がぐちゃぐちゃになって。
とっさに手を握ったのは、彼に目を開けてほしくて。
でも、目を開けて、彼が手を緩めて、私は!
手を握り返すなんて!


廊下を彼と二人歩きながら、私は自分の手を見た。
…レスターの手は、細くて大きくて、ゴツゴツしてた。
男の子の手だった。


い、いや、非常時にそんな、変な事考えてたわけじゃない!
思い返すと、だ。
…胸がぎゅっと、痛くなる。


レスターが足をとめた。
つられて私を足をとめると、医務室に着いたようだ。
扉を開けると、養護教諭の若い女が薬の整理整頓をしていた。


すると、レスターが私の方を向いた。
「君はもう寮に戻りなよ。下校時刻も過ぎてるし、危ないよ」
そう言い、彼は私に笑いかける。
でもその微笑みは、なんだか頼りなく見えて。


でも。
私がそう言いかけた時、養護教諭が遮った。
「その様子じゃ、貴女にかっこ悪い所見せたって思ってるのよ、彼」
クスクスと笑った後、レスターに手招きした。


「さ、彼のためにも寮に戻りなさい。手当は任せて」
ちらっとレスターの方を向くと、少し頬が紅に染まっていた。


     *     *    *

少年は、自分の拳を力強く握りしめ、唇を噛んでいた。
ただただ悔しかった。
兄に簡単に負けてしまう、自分はどうしてこんなに弱いのか。


「ロイス、中で学長が待っている」
兄が言う。
少年は、無言で学長室の扉を開けた。
悔しくて、怒りが込み上げてきた。
従う事しか出来ない自分と、命令してくる兄に対して。


そして少年は学園長に、真実を話した。
偽りのない、真実だけを。


すべて自分の責任です。彼は何も悪くない、彼を巻き込む事はやめてください。
少年の主張はそれだけだった。
学園長は少し困ったような顔を見せたが、その主張を受け入れた。


そして少年に、念のため医務室に行くように言い、話が終わった。
少年は一人、医務室に向かう。