ダーク・ファンタジー小説
- Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.54 )
- 日時: 2016/02/11 16:05
- 名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: uCV9N75p)
私は学園の玄関前をうろついていた。
養護教諭さんには帰っていいって言われたけど、やっぱり心配だ。
レスター、大丈夫かな…?
こっそり、見に行ってみようか。
ばれなきゃ、大丈夫だよね。
ちょっと無事を確認したら、すぐ帰るし!
私はそう決意すると、もと来た道に戻って行った。
* * *
ロイスが医務室に到着すると、中には自分が倒した少年と養護教諭が居た。
「あら、今日はけが人が多いわねえ」
するとロイスのセンサーが、すぐさま反応した。
「おお、センセー美人ですねえ!校舎の隅にこんなに美しい花が咲いていたとは!お名前は?」
養護教諭は一瞬驚いた顔をした後、笑った。
「ソフィア・オルロワよ。貴方、どこでそんなセリフ覚えたの?」
「女性に秘密があるように、男にもあるんです。秘密」
ロイスは、余裕を見せるように笑った。
「ずいぶんしっかりしてるわね、貴方」
「さて、カノヴァスくん。治癒魔法、終わったわよ。」
レスターは先ほどの二人の話を聞いていなかったかのように立ち、微笑んだ。
「今は、一人の方がいいですね」
すると、ロイスが呼び止めた。
「待って。俺、たぶんすぐ終わるから!話がある」
「君は先生と話したさそうじゃないか。僕は案外せっかちなんだ」
レスターは、皮肉を挟んだように返した。
「レスターくんと、二人で話がしたいんだ」
—まっすぐに、そう言われてしまった。
その時ソフィアが話に入ってきた。
「貴方の手当は必要なさそうよ?傷はないし。とっても元気そう」
「そう!俺元気なの!じゃ、そういう事でいいよね、レスターくん!」
じゃあじゃあ、と廊下に出されてしまった。
と、その前に。
「ソフィア!俺、ロイス・ドーレ!覚えといて!」
手を振り終わり、レスターの方を見た彼の顔は、まるで別人だった。
「…えっと」
さっきまでのチャラ男の雰囲気はどこへやら、真面目で、何か。
何かに、苦しんでいるような。
「レスターくん。兄弟って、いる?」
ぎこちなく紡がれた、簡単な質問。
「いない。一人っ子だ」
レスターは、淡々と答えた。
「そういえば君は、バルシェ先生の弟だっけ」
「ああ。噂は恐ろしいな。クラスの違う君も知ってるのか」
ロイスは、情けなく笑顔をつくってみせる。
「…まあ。でも、そんな話をするためだけに僕を呼びとめたのか?」
—戦いを挑んできた時と、全然違うな。
「いや…。君に兄弟が一人でもいれば、絶対に分かる話だ」
「…」
—なるほどな。
「君の言いたい事は分かったよ」
「君の兄さんはこの学園の教師だ。さぞかし小さい頃から比較されただろう」
ロイスの顔が、炎のように赤く染まる。
「そして、これは噂で聞いた話だが—」
「君は教師一家のドーレ家の名のコネでここに入学したんだろ?」
瞬間、ロイスは叫んだ。
「黙れ!!!!!」
「お前になにが分かる!!!俺の気持ちの!!何が!」
だんだんと、頼りない音になっていく。
そしてロイスは、玄関まで走っていってしまった。
一人残されたレスターは、ため息をつく。
そして帰ろうと思い、彼も廊下を歩いていく。
そして、彼は見つけてしまう。
少女が、通学路で血を吐いて倒れているのを。