ダーク・ファンタジー小説
- Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.59 )
- 日時: 2016/02/27 11:18
- 名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: Ar0Lat0c)
体育祭前日。
朝、私はエステマちゃんとホウキに乗り登校中。
「レアノさんは体育祭の競技、何に出るんですか?」
「虫掴み競争と、騎馬戦と、あとは全員参加のヤツかな」
「え、虫掴み競争ってなんですか!?騎馬戦はいいとして…」
「種類はランダムで、虫を掴んで走るんだって」
エステマちゃんは不思議そうに私を見る。
「虫、平気なんですか?」
「うん。虫だって立派な生き物じゃん」
「エステマちゃんは何でるの?」
「私はアイドルクイズにでますよ」
「なにそれ!?」
「まず最初にアイドルの問題がでて、正解した人から走り出す事が出来る…だそうです」
「何そのエステマちゃんのためにあるような種目…」
「ともかく、同じ赤組になれたんだし、一緒に頑張ろうね!」
この学園では、紅白のチームに分かれて対決が行なわれるのだ。
赤組には炎科、水科、操科、治癒科。
白組には氷科、雷科、大地科、創科が振り分けられた。
私としては、炎科の夏芽と水科の雪見が同じ赤組になったのがラッキーだ。
恋のキューピットとしても本気出してやるぜ!
* * *
教室に向かう途中、前にザストが歩いているのを見つけた。
そういえば、最近見かけてなかったっけ。
「ザスト!」
たまには、こっちから話しかけてやりますか。
…返事どころか、振り向きもしない。
「ねえ、ザスト。ザストってば!!」
背中を軽く叩いたところで、ザストは目が覚めたかのように振り向いた。
どうしたんだろうか。
「何、ボーっとして。寝てないの?」
私がそう聞いた途端、ザストは。
ザストは、いつものように笑った。
「ああ、レアノちゃん。はい、昨日まで大きな仕事がありましてね」
—いつもの通り?
何かが、違う…何か…。
「…ザスト、何か、嘘ついてる?」
するとザストは、悲しそうに微笑んだ。
しかしそれは一瞬で、またいつもの、ちょっと余裕そうな笑みの表情に戻る。
「また明日から仕事が入ってしまったので、残念ながら体育祭は出られそうにないんですよね」
「…ああ、そうなんだ。ま、私は精一杯虫を掴みながら走るよ」
すると、ザストはこちらに手を伸ばしてきた。
理解するのに時間がかかった。
…私、ザストに頭をなでられてる?
「体育祭、頑張ってください」
優しい笑顔だった。
何か言おうとした時、手を離され、目の前には誰もいなくなっていた。
これも魔法なんだろうか。
頭に、まだぬくもりが残ってる。
私はこのぬくもりを、昔感じた事がある気がした。