ダーク・ファンタジー小説
- Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.62 )
- 日時: 2016/03/07 20:51
- 名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: h9rhVioE)
「やったー!勝ちましたー!」
エステマちゃんはドヤ顔で座席に戻ってきた。
「凄かったよ、エステマちゃん!答えるのとか、超早かったし」
アイドルクイズはエステマちゃんの活躍で赤組が完全勝利。
現在、2対1で赤組がリードしている。
このまま、どんどん点差をつけたい所だ。
「あ、そういえば」
「ん?」
「王子二人のとりまきがレアノさんの事を話しているのを耳にしたんですが、何かありましたか?」
「…え!?」
まさか、校舎裏での事が広まってしまったんだろうか。
とりまき、恐るべし。
深く考えないでおこう、なんて思ってる場合じゃなかったかな…。
「ちょっと三人で話しててさ。大した事じゃないよ」
「いや、それ凄い事ですよ!?何ですか、詳しく聞かせてください!!」
「それ、ウチらにも詳しく聞かせてくれない?」
上から、声が降ってきた。
慌てて振り向くと、怒りの表情の女子が5、6人と言った所だろうか。
「ちょっと校舎裏ででもお話しようよ」
そう言ったリーダー格の女は笑っていた。
口元だけ。
私とエステマちゃんは校舎裏に連れてこられると、壁側に追い詰められた。
「…あの二人との事でしょ。こっちの子は関係ないから、話なら私だけでいいよ」
エステマちゃんも巻き込まれるのは嫌だ。
これでエステマちゃんは大丈夫だ、と思うと、驚きの答えが返ってきた。
「いやいや、そっちの眼鏡女も関係あるし。アンタ、ロイス様と幼馴染って噂あんだけど」
エステマちゃんは、目を見開いた。
「…その反応。マジなの?」
沈黙が走る。
私は混乱して、誰に何と言っていいのか分からなかった。
「マジなのかっつってんだろ!!!」
突然の大声が、耳に深く響く。
「…本当です」
か細い声は、震えている。
「はは、何。悲劇のヒロインのつもり?キモイんだけど」
…私の中の、何かが切れた。
「なんなの、さっきから。アナタたちはー」
口が、誰かの手でふさがれた。
数秒前まで鬼のような顔だった女たちは、皆顔を赤らめていた。
その中の一人が言う。
「バ、バルシェ先生!!」
「君たち、その辺にしときな。こんなことしても、誰も喜べない」
バルシェ先生がそう言うと、とりまきたちは素直に去って行った。
「あ、ありがとうございます、バルシェ先生!」
エステマちゃんの方を見た。
エステマちゃんは、泣いていた。
大粒の雫が、地面にボタボタと落ちる。
「…あっ、す、すいませ…」
「…怖かったな」
バルシェ先生の声は、とても優しかった。
* * *
影でその光景を見る、少年が一人。
少年は唇を噛みしめる。
少年はいつもいつも、彼女を守れない。