ダーク・ファンタジー小説
- Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.63 )
- 日時: 2016/03/12 13:02
- 名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: r5VGwxxq)
エステマちゃんの涙が止まった頃。
「エステマ、ロイスとちゃんと話してやってくれないか」
そう言って、バルシェ先生は去って行った。
するとエステマちゃんは、覚悟を決めたように頷いた。
「…レアノさん。私の話、聞いてくれませんか」
きっと、ロイスとの関係の話だろう。
「うん。何時間でも聞いてあげよう!」
「それだと、体育祭終わっちゃいますよ」
私たちは笑った。
そして。
「…ロイスとは家が近所で、小さい頃はよく一緒に遊んでいました」
* * *
「ねえねえロイス!あの山に行こうよ、公園の近くの!」
「あの山って、ギラべ山の事?やだよ、クマが出るんだろ?あそこ」
小さい頃の私は、好奇心旺盛なおてんば娘。
ロイスは気弱で、私に引っ張られていく男の子だった。
「いいからー!!ギラべ山にしか咲いてない花が見たいの!」
「うう…分かったよ、ちょっとなら…」
「うーん。花、ないなあ…。青くて、かわいいやつ…」
「ねえ、暗くなっちゃったし、もう帰ろうよお」
でも私は、どうしても諦められなくて。
「…いや。バルシェ兄に、プレゼントしたいんだもん」
もうすぐ誕生日だったバルシェ先生に、子供ながらに考えた贈り物。
「…分かった。おれも一緒に、頑張って探すから」
その時のロイスは、とても頼もしくみえた。
そして。
「あったー!!あったよ、ロイス!!」
「本当!?わあ、すごいね、綺麗だねえ」
何時間も探して、ようやく見つけた一輪の花。
それは、図鑑でみたものの、何倍も綺麗だった。
でも—
「あれ、帰り道、どっちだっけ」
「分かんない…」
歩きまわって、でも、帰れなくて。
「おれたち、もう、家帰れないんだ…」
ロイスがわんわんと泣きだしてしまった。
つられて私も、泣いてしまった。
その時、近くの茂みから音がして。
目に映ったのは、クマだった。
「う、うわあ…」
暗闇のなか、クマの目が光ってみえる。
もう私たちは、死んでしまうのか。
そう思った時。
「ロイス!!エステマ!!」
バルシェ先生だった。
「大丈夫か!?どこか怪我は!?」
「に、にいちゃん…。クマ…」
「クマは、こっちが何もしなければ、何もしてこないから。さあ、ホウキに乗れ」
こうして家に着いたのは夜11時頃。
教師一家でお金持ち、そんなドーレ家から、接近禁止の命令が私に出た。
* * *
「それから、ロイスとは会ってません。でも」
エステマちゃんは、泣いていた。
「今、すごくロイスに会いたい。会って、私の気持ちを伝えたい」
そう言った彼女は、泣きながら笑っていた。