ダーク・ファンタジー小説
- Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.64 )
- 日時: 2016/03/14 20:49
- 名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: pVoFPF2t)
俺は兄の、引き立て役だった。
何をしても、バルシェの方が凄かったと言わんばかりの両親。
両親と最後に話したのは、いつだっただろうか。
そんな時、俺を支えてくれたのは。
ただ一人、俺と遊んでくれた彼女。
彼女はいつも笑顔の絶えない、俺の太陽だった。
ある日俺と彼女は、森で迷子になった。
その中、必死に俺たちを探してくれたのは、兄だった。
兄は体中に傷がつき、帰る頃にはとても痛々しい姿になっていた。
両親は大激怒、それから今まで、彼女とは口をきいていない。
そして俺は地域の基礎学校に入学、女にチヤホヤされるようになった。
両親は共に美形で、きっと俺もそれを受け継いだのだろう。
そのうち俺は、女の扱いだけは兄に勝るようになった。
成績はとうぜん悪い。
とても魔法学校には行けそうになかった。
両親はドーレ家の名誉を汚す気か、と激怒。
ドーレ家のコネでこのホーズ魔法学園に入った。
…これまでの俺の人生は、まるで最悪。
だが、本当にそれでいいのだろうか。
レスター・カノヴァス。
彼を見ていると、自分が嫌になる。
彼がうらやましい。
そして純粋に、憧れた。
だからこそ。
俺は彼女と、ちゃんとケリをつけなければいけないと思う。
そう決意し、俺は顔をあげた。
…先に。
目の前に。
「エステマ…?」
目の下が少し赤く、何かを決意したような表情。
瞳がまっすぐ、こちらを見ている。
「ロイス…!」
駆け寄ってくる。
「あ、今…。今って、話せる?」
「ああ。大丈夫」
「今から私、すごく嫌な事いうかも」
「…何?」
「私、昔みたいに、貴方とバルシェ兄が、仲良く笑っている所が見たい」
「…分かった」
「!?は、早くない!?も、もーちょっと、考えるとか…」
正直に言うと、あまり考えなかった。
だって。
「俺の答えは、もう決まってるんだ」
自然と、笑みがこぼれてきた。
きっと俺は、嬉しいんだ。
「エステマ、全然関係ない話、してもいいかな」
「…?何?」
エステマは、首をかしげている。
「俺は、君が好きだ」
その瞬間、世界が輝いた。
鎖から、解き放たれたような。
「何度も諦めようと思ったけど、やっぱり駄目だった」
もう悔いはない。
俺は知っているのだ、小さい頃から彼女が好きなのは。
「私も、ロイスが好き」
彼女は、泣いていた。
え、あれ、だって、なんで?
「え、エステマは、バルシェが好きなんだろ?」
「えっ…?なんでそうなるの?」
そういえば、なんとなく決めつけていたような気がする…?
「俺の勘違い?」
「そうなるね」
二人で、思いっきり笑った。
「エステマ。俺さ、今までバルシェ、いや、兄ちゃん」
「兄ちゃんと比較されて、すごく嫌だったけどさ」
歯を見せ、二イッと笑う。
「エステマといると、どうでもよくなった。俺には、君がいれば十分だ」
そしてまた、二人で笑った。