ダーク・ファンタジー小説

Re: 魔法少女の世界−New World− ( No.71 )
日時: 2016/04/02 11:46
名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: 4OBDh6qC)

私は、ただ立ち尽くすしかなかった。
目の前の現実を受け入れるのは、難しい。
起きてすぐ、なんとなく目に入った雪見のカレンダー。


「明後日、テストじゃん…」
すでに起きていた雪見が、驚いたように聞き返す。
「レアノちゃん、知らなかったの?」
「知らない…」


「なんで!?てか二人とも勉強してなかったじゃん!!」
「紅花は夜遅くまで課題やってたよ。私も復習してたし」
「嘘でしょ…」


「やばいー!!課題とか何一つやってないー!!てか課題が何かも分かんないー!!」
「この間配られた問題集だよ。ほら、私も手伝うから今からでもやろ?」
今日学園が休みで良かったね、と付け足す雪見。
うう、友達って素晴らしいなあ…。



     *     *     *

学園に戻る、一人の青年の影。
それに気付いたバルシェは、素早く彼に駆け寄った。
「大丈夫ですか、ザスト様!?」


彼は、頼りない笑みで答える。
「様、はやめてくれといつも言っているだろ?それにここは学園だ。誰かに聞かれたりしたら大変だ」
バルシェはおずおずと反論する。


「ザスト学長も、いつもの口調じゃなくなってますよ?」
「ああ…。いや、今くらい良いだろ。今はそれどころじゃない」
ザストは、自分の体に目をやる。


服はボロボロになり、腕や足に切り傷、出血が見られる。
「ひどい傷ですね…。養護教諭のソフィアを呼んできます!」
バルシェはそう言うと、全速力でホウキを飛ばした。


一人になると、ザストは自分の家族を思い出す。
「アイツもずいぶん強くなったものだ。だが—」
それは、家族を殺すための強さ。
「まったくもって、喜ばしくない成長だな」


「ザスト学長、ご無事ですか!?」
息を切らしながら問うのは、養護教諭のソフィアだ。
「今、治癒魔法をかけますから!!」


どんどん、力が戻っていく感覚。
「そういえば、もうすぐ筆記試験があるな」
「そうですね。今日は皆試験週間で休みですから、勉強していると思いますよ」


「あの子は授業中、寝てばかりと聞いたが…」


「友達に恵まれているようだ。幸せなら、それでいい」

バルシェが微笑みながら言う。
「彼女は不思議な力があるように感じます。彼女の周りの人達は、皆幸せそうで」
ソフィアも笑う。
「惹かれている男の子もいるみたいですよ」


「えっ!?そ、それは困るな…」
そうか、あの子は。


母親によく似た、優しい子に育ってくれたのか。