ダーク・ファンタジー小説

Re: トランプゲーム。 実.況.者 ( No.21 )
日時: 2016/03/13 19:20
名前: 泉 (ID: wVDXtEbh)

〜クラブ:4〜
「・・・っは、あ、っ、・・・」
目の前で友人を殺されそうになる、恐怖。
恐い、という感情が平常心をみるみる内に蝕んでゆくのが身にしみて感じられた。
冷や汗がたらり、一粒垂れた。
「手持ち、教え合おうか。」
レトルトが発した言葉への返答も一瞬遅れる。
あのモニターからは流水の音しか聞こえない。
だが時々かすかに「助けて」というキヨの悲痛な叫びが混じり、それがまた心臓をばくばく言わせるのだった。
震える指先をどうにか押さえ、カードをテーブルに並べる。
よく見れば、いつもは冷静なP-Pですら目に焦りの色を浮かべていた。
「じゃあ数字、揃えるで・・・。の前に、」
ちら、とレトルトを見る。
その行為を確認した彼は、あんな、と話し出した。
「キヨ君、見てくれへん?」
咄嗟に無理、と言葉があふれる。
P-Pも首を横に振った。
その直後だった。
「現実から目ぇ背けたあかんのや!!」
いきなりの大声に少し驚いてしまう。
「恐いのは分かってるんや。せやけど、そしたら、キヨ君死んでまうんや。だから、」
レトルトは弱弱しい声で
「泣いたあかん。」
と言った。
そこでやっと、頬に伝う冷たい何かを感じ取った。
あぁ、俺、泣いていたんだ。
そして、
「俺ら、何も変わらんなぁ。」
口をきゅっと結んだP-Pと、鼻をすするレトルト。
ふと振り返れば、必死に箱を割り砕こうと体当たりをするキヨの姿が視界に飛び込んできた。
前を向き直したときには、誰一人として涙を流していた事はなかった。