ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.21 )
- 日時: 2016/01/19 06:56
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「私にとって人肉こそ至宝。でも人は異常だという。 どっこも異常じゃないよ。私にとっては」
EpisodeB 藍沢和音 Ⅳ
「アハハハ…あー、飲んだ飲んだ」
夜にそんな陽気な声が聞こえて目が覚めた。
子供部屋の戸をそっと開け、すぐ目の前にある廊下を見る。
そこには酒に酔ったのか顔が赤くなっている母さんの姿があった。
服は出かけたときよりも豪華でアクセサリーまで付いていた。
「にしても激しかったなー、今日は。でも、気持ち良かったしいっかー」
私の存在に気づいていないのか陽気にヘラヘラと笑いながらそう独り言を漏らしていた。
「いいよね、これぐらい。一人で【 変 な 子 供 た ち 】育ててるんだからね」
【 変 な 子 供 た ち 】
心に刺さる何かを感じた。辛い、でも何故だか涙は出ない。
「もう寝よう」
小さく呟いて戸を閉める。
そして川の字になるように敷かれた布団に入り、掛布団を頭まで被る。
【 変 な 子 供 た ち 】 【 変 な 子 供 た ち 】 【 変 な 子 供 た ち 】
母さんの言った言葉が頭の中でリピートされる。
聞きたくない。そう思って耳を塞いでも、まだ頭の中でリピートされる。
耳を塞ぎ、布団の中で蹲る。
聞きたくなかった。あんな言葉。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.22 )
- 日時: 2016/01/19 06:55
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「私にとって人肉こそ至宝。でも人は異常だという。 どっこも異常じゃないよ。私にとっては」
EpisodeB 藍沢和音 Ⅴ
「和音。起きろ、和音!」
あぁ、もう朝か。 昨日の夜見た母さんの姿と、聞いたあの言葉のせいでよく眠れなかった。
「わーおーん!」
そう言いながら私の体を揺するのはリー兄だと思う。
「眠い……」
そう言いつつもこれ以上怒らせたくないからむくりと起き上がる。
「おはよぉ、リー兄ぃ…」
「はよ、和音」
眠さのあまり、語尾を伸ばしてしまう。
「あッ、和音起きたんだー!」
もうすでに着替えていた奏音が私を見てニッコリ笑う。
「おはよ、和音」
その笑顔のまま、私にいう。
「おはよぉ、奏音…」
私も精一杯笑顔を作ってみる。
「お母さん帰ってきたよ! やっとご飯が食べれるね!」
「ぁ…帰ってきたんだ…お母さん…」
知らなかった。と呟くけど本当は知っている。
【 お母さん 】その単語を聞いた瞬間に昨日の言葉が再び思い出された。
【 変 な 子 供 た ち 】
それはきっと私達兄妹の事だろう。
リー兄は…ピロフィリア?っていう火を見て興奮しちゃう人だし、でも、奏音は別に変なところはない。私だってそう。
もしも、本当に、私達の事を言われてたら…
お母さんは私達のこと、嫌いなのかな。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.23 )
- 日時: 2016/01/19 20:31
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「私にとって人肉こそ至宝。でも人は異常だという。 どっこも異常じゃないよ。私にとっては」
EpisodeB 藍沢和音 Ⅵ
「おはよう、梨音。奏音」
いつものように薄汚れたキッチンに立っている母さん。
ニコニコ笑いながら名前を呼んだのは奏音とリー兄だけ。私の名前何て、呼んでない。
「おはよう。お母さん」
それにつられて笑う奏音。 でも、いつもの笑いとちょっと違う。
言葉に上手く表せないけど、何かが違った。
「昨日は御免ねぇ。昼も夜もいなくって。今日も出掛けちゃうからお昼と夜分。ご飯作っとくね」
今日も出かけるんだ。
【 良 か っ た 】
普段だったら思わないことを、今では思ってしまっている、
昨日の夜聞いた母さんの言葉。母さんの顔を見ると思い出して胸が苦しくなる。
一日中、そんな思いをするくらいなら奏音と留守番をしている方がまだいい。ずっと楽しいはず。
「じゃあ、お母さんはもう行くね。行ってきます」
ご飯を作り終えた母さんが大きなバックを持って家を出る。
今日もまた、夜に嫌な言葉を聞くことになるのかな。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.24 )
- 日時: 2016/01/19 20:44
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「私にとって人肉こそ至宝。でも人は異常だという。 どっこも異常じゃないよ。私にとっては」
EpisodeB 藍沢和音 Ⅶ
母さんはまた、夜遅くに帰ってきた。
昨日と違うのは誰かと一緒にいるって言う事。
「だから!先に浮気したのはあんたの方でしょ!?」
「違うと何度言ったらわかるんだッ、アレは仕事の関係で…」
「はぁ?体の関係の間違えじゃないの?」
久しぶりに聞く、父さんの声。
リビングから少し離れた子供部屋まで聞こえる大きな声で怒鳴っている。
部屋をこっそりと出て、リビングを覗く。
父さんは何か紙を持っていた。
「もう本当にお前とはやっていけない。ココに、サインしろよ!」
「離婚したら子供たちどうする気?私は嫌よ、あんな【 変 な 子 達 】一人で育てるの!!」
また聞こえたあの言葉。 つぅーと、頬に涙が伝う。
悲しい?のかな。 変な子って言われて。
私が泣いてるなんて事を知らないで怒鳴り合いは続く。
「彼奴らはお前が勝手に産んだ子供だろ!自分でどうにかしろ!!」
「産ませたのは誰よ、産ませたのは!」
耳を塞いでしゃがみ込む。
見たくない、聞きたくない。そう思って耳塞ぐ。
それでも声は聞こえてしまう。
少しすると、どん と大きな音がした。 人が倒れたときのような音が。
目を開いて、リビングの中を見る。
中には何か慌てているように見える父さんと…
頭から血を流している母さんが倒れていた。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.25 )
- 日時: 2016/01/19 20:52
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「私にとって人肉こそ至宝。でも人は異常だという。 どっこも異常じゃないよ。私にとっては」
EpisodeB 藍沢和音 Ⅷ
「お、おい。生きてるよな、おい!」
父さんが母さんの肩を掴んでガンガン揺らす。
いくら呼びかけても揺すっても、母さんは目を開けない。
「おい、嘘だろ…」
父さんの額からは汗が噴き出て、焦ってるように見えた。
「クソッ…!」
急に立ち上がり、玄関の方へ走っていく父さんを見て、先回りをした。
正直、なんでこんなことをしたわからない。
玄関の方へ先回りをして、後から来た父さんの足に自分の足を引っ掛け、転ばせた。
本当に何がやりたかったのかわからない。
どん とさっきと同じ音を立てて父さんが倒れる。
下駄箱の角に頭をぶつけてしまい、母さんと同じように頭から血を流している。
死んじゃった? 起き上がらないのを見てそう思った。
「お父さん?」
いくら呼んでも目を覚まさない。
手を触るとどんどん冷たくなっていくのがわかる。
もう死んだんだ。幼い頭で考え付いたのがそれだった。
死んだ、と思い込んだ後何でそう思ったのかわからないが何故か美味しそうな肉に見えた。
何日もご飯を食べていないからそう見えたのかもしれない。
とっても美味しそうなご飯…。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.26 )
- 日時: 2016/01/19 21:01
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「私にとって人肉こそ至宝。でも人は異常だという。 どっこも異常じゃないよ。私にとっては」
EpisodeB 藍沢和音 Ⅸ
気づいた時にはもう、キッチンから子供用の包丁を持って来て肉を切っていた。
切り込みを入れるたび、溢れ出す血を見て目眩が何度もした。
でも、それでも肉が食べたかった。
朝になるともう、父さんも母さんも骨だけになっっていた。
「おはよぉ、わお…」
目を擦りながらリビングにやってきた奏音。
リビングにある母さん【 だ っ た も の 】を見て青ざめる。
「ねぇ、和音。その骨?って何…?」
青ざめた顔で小刻みに震えながら骨を指さす。
「こっちはお母さんの骨。玄関の方にあるのが父さんの骨!」
ニコニコ笑いながらそう言うと、奏音は怯えたように私に聞いた。
「骨、ってことは、さ。肉の部分はどうなったの?」
「…肉の部分は…
【 私 が 食 べ ち ゃ っ た 】」
【私が異常と化したわけは、親を食べたから。
とっても美味しい人肉を食べるようになったことから】
EpisodeB 藍沢和音 fin