ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.3 )
- 日時: 2015/12/16 19:35
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅱ
高校2年の夏。彼女は編入してきた。
「藍那夏織です。よろしくお願いしますね」
あの可愛らしい笑顔はよく覚えている。
あの時、「苗字に藍が入ってるから」という謎の理由で彼女は私の隣の席になって学校案内も任された。
テストで高得点をとっても他の子みたいに『カンニング』とか言わない。
「奏音ちゃん頭良いんだねー。凄い!」
なんて目を輝かせて私の答案を見ていた。
「別に。凄くないよこれぐらいの点数」
冷たく接しても、彼女は「凄いよー」とか言ってくる。
この子は他の子と違う。そう思った。
この子なら、私を裏切ったりはしない。って。
* * *
「奏音ちゃん、次移動だよね?一緒に行こう!!」
「………うん。いいよ」
薄っすら微笑みを浮かべてみる。滅多に笑わないため、彼女も一瞬驚いた表情をしてた。
「ね、私の事オリって呼んで!」
「オリ?」
「うん!私の前の学校の愛称。『かおり』だから最後の2文字取ってオリ」
ニコッと笑いどこか誇らしげにそう言う彼女。
「ん、分かった。じゃあ私の事はノンって呼んで。妹からそう呼ばれてるから」
分かったー、とニコニコしながら言うオリ。
この時期が一番幸せだったかもね。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.4 )
- 日時: 2015/12/16 19:57
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅲ
高校2年も残り少なくなってきた冬。
いつものようにオリと理科室へ移動中。
「ぁ...」
小さく声を出したオリの視界の先には、クラスの女子に人気の先輩。
「へー、オリってあの先輩好きなのー?」
ちょっとからかい気味に言ってみる。別に、オリが誰を好きになろうが私には関係ない。
「ぇ、あ、うん…でも、話したこともちょっとしかないしすれ違うだけで幸せなんだ」
少し寂しげに笑うオリ。
「青春してますね〜」
「むぅ…ノンちゃんは気になる人はいないの?」
「いないよー。恋愛に興味ないし」
苦笑気味のそう言う。本当に、恋愛に何て興味はない。
「ノンちゃんは可愛いんだから絶対近いうちに告白されるよー」
「何その予想ー」なんてクスクス笑いながら言う。
告白されたって、全く嬉しくなんてない。
* * *
「ね、君藍原奏音ちゃんだよね」
校門を出かけたところで話しかけられた。
ああ、オリが気になってる先輩か。顔を見て納得する。
「俺さー、君の事結構気になってるんだよねー。ね、俺と付き合ってみない?」
俺結構人気でしょー?そんな人気の先輩の彼女だったら友達に自慢できるよー。なんてウザったらしいことを言う。
「遠慮しておきます。私、恋愛事に興味ないですし。貴方の事も興味ないで…」
こんな出来事、漫画や小説の中だけかと思ってた。
口を口を塞がれる。周りには多くの人。それに写真を撮ってる人もいる。
無理やり引きはがして逃げる。足が遅いから追いつくんじゃないかとおもって心配だったが追って来ていなかった。
……明日、最悪な事が起きそうで怖い。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.5 )
- 日時: 2015/12/16 20:14
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅳ
あの後、家に帰って口をよく洗った。いくら洗っても唇が触れた感覚は今でも残っていて気持ち悪い。
朝、教室に入った瞬間静寂が訪れ、急にクスクスと女子を中心に笑い出す。
何やってるんだろう。と思いながら席に着くと『よくアレ気にしないでいられるよねー』なんて聞こえる。
なんとなく、黒板を見ると【藍沢奏音 校門前で先輩に強引にキス!?】と書かれていて、周りには昨日の写真が貼られている。
違う、私がキスしたわけじゃない、無理やりキスされたんだ。
あれを見た瞬間、オリの顔が脳裏に浮かんだ。
『ぇ、あ、うん…でも、話したこともちょっとしかないしすれ違うだけで幸せなんだ』って言って寂しげに微笑んだあの顔を。
「ね、ノンちゃん…アレ、本当…?」
音もなく近づいてきた、オリ。青ざめた顔で黒板を指さす。
「あんなの嘘だよ!私がそんなことするはずな「藍沢さんからキスしてたじゃーん。私見てたよー、昨日」ッ…!」
否定しようにも遮られて何も言えない。
「ノンちゃんさ、私が先輩の事好きって知ってたよね…?ノンちゃん、恋愛に興味ないって言ってたよね。アレ、嘘だったの…?」
涙を瞳一杯に溜めて、訊いてくる。
止めてよその顔。泣きたいのはこっちだよ。
「そーだよー。藍那さん。藍原さんてサイテーだよね。私同中だから知ってるけどさ、テストでいい点取ってるのはカンニングしてるからなんだよ」
違う、違う、違う…!
「そ、だったんだ…。ノンちゃん、そんな人だったんだね…」
涙を流しながらそう言うオリ。
「そんな人と私、関わりたくないな………」
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.6 )
- 日時: 2015/12/16 20:29
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅴ
「そんな人と私、関わりたくないな………」
ずきりと胸が痛んだ。オリも結局は、あの子達と同じ。上辺だけの友人。
「もう、話しかけないで…」
追い打ちをかけられた気分。泣きたい、でも、泣いたらなんだか負けのような気がする。
カバンを掴み、教室を出る。早足で、はやく、この場を去りたかった。
もう学校へ行きたくない。ずっと部屋に居たい。
一番信用していたオリにまで嫌われたら学校に行く意味なんてない。
人間なんて、信じられない。何も信用できない。
__ニンゲンなんてシンヨウできない
「ただいま…」
誰もいない家に帰る。
兄さんも、和音も学校に行っていて居ない。一人ぼっちの時間。
ふっと、自分の中で何かが緩んで涙が溢れだす。
私はなにも悪くない
寧ろ私が被害者だ
無理やりキスされたのに、私が無理やりキスをしたことになってる
違うって言っても誰も信じてくれない
根も葉もない噂を言うだけのクラスメイト
根も葉もない噂に騙されて私の元から離れて行ったオリ
私は一体、だれを信じて生きて行けばいいの
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.7 )
- 日時: 2015/12/17 07:06
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅵ
「……ちゃん、ノンちゃん!!」
無駄に煩い和音の声で目覚める。
薄っすら目を開けるとどこか心配したような顔の和音が目に映る。
「帰ってたんだ…和音」
むくりと起き上がるとなんだか頭が痛い。目も腫れていて不細工だろう。
「大丈夫?ノンちゃん。目腫れてるよ…」
心配そうにそう言い、私の方へ手が伸びる。
_私を裏切ったニンゲンと同じ手が…
怖い、嫌だ、触らないで!!!!
ぱしん、と音を立てて和音の手を叩き落とす。
ぇ…、と小さく声を漏らし、驚いた顔の和音。
いくら双子の妹等はいえ、私を裏切った奴らと同じ手。
触れられたくない。
「の、ノンちゃん……?」
『ノンちゃん』と頭の中でオリの声が流れる。
私の元から離れて行ったあの子の声が。
やめて、呼ばないで、その呼び名で一生…
「呼ばないでよ…」
消え入りそうな声で言う。和音に届いているか分からない声。
和音にも触られたくない、名前も呼ばれたくない。
和音の事も、もう信じられない。
もしかしたら和音もいつか、私を喰いちぎってしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。母さんや、父さんがたどった末路を辿るのだけは御免だ。
もしかしたら兄さんだって、私を燃やしてしまうかもしれない。
そう考えるとなにも信じられない。
いっその事、部屋に引き籠ってしまおうか。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.8 )
- 日時: 2015/12/17 19:28
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅶ
「……ふぅ…」
部屋の鍵を閉める。ここの部屋は内側からしか開かないから入ってこれないはずだ。
もう、誰とも会いたくない。誰も信じられない。
ドアの前にしゃがみ込む。
「ッ……」
ギュッと下唇を噛んで涙を必死に堪える。
和音に触れられることを拒絶した時、少しの罪悪感があった。
幼い頃からずっと一緒だった和音。中学の頃だって、クラスは違っても休み時間に会って話したり、一緒に帰ったり。
和音に触れられる、名前を呼ばれるのを拒絶したのは今日が初めて。
ちょっとは後悔している。
でも、あの時は本当に嫌だった。オリと同じ呼び名で、呼ばれるのが。
本当に、和音はいつか私を裏切っちゃうのかな…。
兄さんも、きっとそうだ。
皆いつかは裏切って、私を一人にしていくんだ。
部屋に居れば安心。誰も来ないし、一人っきりの生活。
パソコンだってあるから外の事もわかる。
外に出なくたって、生活できるんだ。
学校みたいなあんな地獄へ行かなくても良い。
誰にも会わなくていい。
何て最高なんだろう。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.9 )
- 日時: 2015/12/18 17:40
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅷ
……外では今、卒業式が行われている時期だろうか。
3月は卒業の季節だもんなー、なんてベッドの端に座り、考える。
学校へ行き事をやめた私には関係ない話だけどさ。何となく、考えちゃう。
「学校…か」
冬からずっと学校へ行っていない。行く気にもなれないし、行きたくもない。
そんなことを思っていると玄関から、ピンポーンとインターホンの鳴る音。
今日は平日。当たり前のように兄さんも、和音もいない。
人に会うのは正直言って嫌だけど、部屋から出て、玄関へ向かう。
荷物だったら受け取ればいいだけだしね。
「……」
無言でドアを開けると頭上から、久しぶりだな、と声が聞こえる。
顔を見なくても、声だけで分かった。
『ね、君藍原奏音ちゃんだよね』
『俺さー、君の事結構気になってるんだよねー。ね、俺と付き合ってみない?』
『俺結構人気でしょー?そんな人気の先輩の彼女だったら友達に自慢できるよー』
あの時の、私とオリが離れる原因になったあの男の声。
「いやー、合ってて良かったよ。君の友達の夏織ちゃんに住所訊いてよかったー」
ヘラヘラと笑いながらそう言う。
夏織ちゃん。一番聞きたくない名前。
夏織、かおり、カオリ、オリ!
何度か私の家で勉強を一緒にしたから住所は知っている。
でも、何でこの人に教えちゃうの…!!
「ねえ、この頃学校来てないけどどうしたの?俺とキスしたのから冷やかされて嫌になった?」
グッと顔を近づけられる。
気持ち悪い、吐き気がする。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.10 )
- 日時: 2015/12/18 20:56
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅸ
「…何か喋れよ」
一気に声のトーンが下がった。
声を出そうにも喉に声が張り付いて声が出ない。
段々近づく顔、あの時と一緒。
私が最後に学校へ行った日の前日と
オリと離れた日の前日と
全てが狂い始めた日と…
同じ。
「嫌ッ」
思いっきり押してドアを閉めようとする。
尻餅をついた程度ですぐに起き上がり、ドアを抑えられて結局は閉められなかった。
「おいおい、何すんだよ」
怖い、嫌だ、怖い!
ニンゲンは誰で怖い。
ふと、服のポケットに手を突っ込む。
細長い棒状のものを触り、取り出す。
黄色い、ちょっと大きめのカッター。何となくポケットに入れていたカッター。
…コレで刺して、死んじゃっても正当防衛だよね?私。
カチカチカチと音を立てて、カッターの刃を出す。
「お、おい。何やってんだよ。
少し怯えたような声が聞こえる。
さっきの威勢のいい声はどうしたんですかー?なんて笑いたくなっちゃう。
「何って、刺すんですよ。これを、貴方の身体に」
コテン、と首をかしげて言う。
「は、や、やめろ…!」
「何言ってるんですか。そっちが先にやってきたんじゃないですか。
貴方のせいで私が壊れちゃったんですよ?責任もって死んでください」
肉に刺さる感覚。なんだか気持ち悪い。
カッターを抜くと、傷口から血が溢れだす。
でも、もっとやらないと死なないね。
ザクリ、ザクリ、ザクリ・・・
どんどん増えていく傷。溢れる血。
どんどん血が引いて冷えていく身体。
よく見たらスッゴイ……
「綺麗…」
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.11 )
- 日時: 2015/12/19 08:01
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 Ⅹ
「アハ…アハハハ…アハハハハ」
スッゴイ綺麗、さっきまで生身の人間だとは思えない…。
血の引いて青白くなった肌、どんな言葉も発さない口
何でこんなに綺麗なんだろう…
死んじゃってるんだし、私の部屋に持ってても良いよね。
腐りかけたら和音にでもあげよう。あの子だったら喜んでくれる。
ずるずると2階の部屋まで引っ張っていく。
ちゃんと床に付いた血は後でふき取る。
今は、この美しい死体をもっと見ていたい…。
「あーあ。この後どうしよう…」
死体を床に置き、ベッドに寝転がる。
確か、和音や兄さんと同じ異常性癖に、死体を好む性癖もあったな。
何だっけ…ネクロフィリア?だっけ。
昔から兄さんや和音みたいな異常にはなりたくない。って思ってたけど遂に私も仲間入りかー。
そう思ったらふっと自分の中で何かが切れたような気がした。
和音がカニバリズムになる前は無邪気な子供だった。
でも、妹でさえ異常性癖者になったから私はならないように。って気を張り詰めていた。
小学生の頃は、冷徹、毒舌、辛辣女、なんて言われ続けたくらいの性格だ。
今はもう、私も異常性癖者。そんなことを気にしなくっていいんだよね。
昔みたいに少しは無邪気に生きていいのかな…ちょっとは邪気あるかもだけど。
もう、自分を作るのやめて自由に生きよう…。
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.12 )
- 日時: 2015/12/20 08:12
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 XI
「のわっ、何この血」
玄関の方から和音の驚いた声が聞こえる。
ああ、血を拭き忘れてた……。
会うのは嫌だけど、血は拭かないといけないよね…。
「めんどくさ…」
小さく呟き、ベッドから起き上がる。
久々に和音と顔を合わせる。どんな顔されるだろう…。あの時の事、怒ってるかな…。
玄関の方へ行くと、雑巾で床に付いた血を拭いている和音がたいた。
「和音、貸して。私がやるから…」
膝をついて雑巾がけをしている和音に手を伸ばす。
「え…奏音…?」
私を見上げ、驚いた顔をしていたが目に涙を溜めて、「やっと出てきた!」といつものように笑った。
「久しぶり、和音」
つられてクスッと笑ってしまう。
いつぶりだろうか。笑ったのは。ずっと部屋で一人だったから笑ってなかったしな…。
「で、奏音。この血はなに?」
「血は血だよ。人間の血」
キョトンとしてそう言う。嘘はついてない。人間の血だもん。
「じゃあ誰の血?」
「……最低最悪な男の血」
先輩、というのも嫌だしかといってあの男の名前も知らない。
「まさか…その男の人、殺しちゃったの?」
「そう。今私の部屋にいるよ。死体となって」
見る?と聞くと首を横に振る和音。
ニンゲンを食べてるくせに、死体は見たくないらしい。
「…奏音。部屋にいるってことは…自分で持ってったの?」
「そう。ここで殺しちゃってスッゴク綺麗で欲しかったから持ってった。
どうせ思ったんでしょ?ネクロフィリアになったか、って」
そう言うと、コクリと頷く和音。
「奏音も、異常性癖者になったんだな、って思って」
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.13 )
- 日時: 2015/12/20 17:31
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 ⅩⅡ
異常性癖者
昔からそうはなりたくなかった。
火を見て興奮するリー兄。普通の食事より、人肉を好む和音。そんなのにはなりたくなかった。
「奏音がさ、そんなのになったのって私のせい?」
「和音のせいじゃないよ。全然違う人たちの……せい…」
オリの顔が頭に浮かぶ。
震えが止まらない、涙も出そうで下唇を噛んで絶える。
「奏音……?」
心配そうな声を出す和音。
「大丈夫。…はやく拭いちゃおう。落ちにくくなっちゃう」
そういうといまいち納得してないようだが「うん」と頷く和音。
再び、血を拭きとり始めたのを見て、私も雑巾を取りに行く。
「オリ……」
ねえ、君は何であんなこと言ったの?
そんな理由、覚えてるわけないか
そもそも、私の事すら覚えてないだろうね
でも、私は一生忘れないよ 私を一人にした君は 一生 忘れない
「一生ね…忘れないんだから…」
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.14 )
- 日時: 2016/01/10 06:27
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 ⅩⅢ
血も拭き終り、リビングのテーブルに迎え合わせになるように座る。
「で、奏音。さっきの答え。まだ聞いてないから言って」
「言わなきゃダメ?」
コテンと首を傾げる。
「だって…昔から血自体を見るのが嫌いでグロイ話とかも泣きながら耳塞いでたあの奏音がだよ!あの奏音が人を殺せるとは思えない!!」
あの純粋な奏音が…と言いながら両手で顔を隠す和音。
別に私は純粋でもない。全く違うモノ。
純粋な頃なんて、君が親を食べるまでぐらいだよ。
「…中学の頃からさ。まぁ、トモダチは数人はいたよ。でもクラスの中でも浮いた存在だったじゃん?私」
「うん、はっきり言って浮いてた。クラス離れてた私のところにまで奏音の噂流れてきたもん。『カンニングの藍沢姉』って」
でも知ってるよ?奏音がカンニングする人間じゃないって事は。奏音はそんな人間じゃないじゃん!
なんて誇らしげに笑う和音。
カンニングしたって意味がないじゃん。
「やっぱり、知ってたんだ…。カンニング噂のせいで全員、私から離れて行った。それで高校で夏織って子と出会ったけど…」
その子も離れて行った。 ただ一つの噂で離れて行った。
【 偽 り だ ら け の 噂 を 信 じ て 。 】
- Re: 「私達が異常と化したわけ。知りたい?」 ( No.15 )
- 日時: 2016/01/10 07:23
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「みんな私の事を異常って言うけど、私から見たら貴方たちも十分異常」
EpisodeA 藍沢奏音 ⅩⅣ
「ニンゲンなんて信じられない。簡単に人を裏切って平気な顔をしてる。
ただの噂で皆離れて言って私の悪口ばっかり言う」
今まで誰にも言えなかったことをぶつける。
和音は何も言わないでただ、うん、うん。と頷くだけ。
「もう、ニンゲンなんて嫌い…」
自分でも知らないうちに涙が溢れていた。 涙が頬を伝う。
「奏音、辛い思いしてたんだね…」
知らなかった。と呟く和音。
まぁね。顔に出さなかったもんね。誰にも言わないでずっとため込んでたもん。
「じゃあ、私の事も信じられない?」
「御免、はっきり言って信じられない。妹だからと言っていつ裏切るか分からないじゃん」
何度も何度も人が離れていくことを経験しているとニンゲンを信じられなくなる。
だから、信じられるのは、愛するのは【 死 体 だ け 】。
【私が異常とかしたわけは、ニンゲンからの裏切り。
それによっての人間不信。 死体しか愛せないようになったことから】
EpisodeA 藍沢奏音_fin