ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「音響に興奮するのが異常?笑わせないでよ」 ( No.31 )
- 日時: 2016/01/27 17:09
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「音響に興奮するのは異常?笑わせないでよ。音響は興奮するものよ。知らないなんてかわいそうに」
EpisodeC 翠川星香 Ⅲ
「あー、水上先輩の事なら色々お得情報盛りだくさんだよ〜」
間延びした口調で言うのは情報屋の和音ちゃん。
小さな手帳をぺらぺらと捲り何かを探している。
きっと私とリアが聞いた転入生先輩こと、水上葉音さんの事。
「んー、これかな〜。
えっとね、家族構成は9個上にお姉さんがいて両親は数年前に他界。今はそのお姉さんと二人暮らしで自分でもバイトをしている。そして同級生数人と一緒にバンドを組んでてそのバンドのボーカルをやっている」
先輩の情報を読み上げる和音ちゃん。 何故、家族構成まで知っているのか不思議過ぎる。
「そんなに情報あるんだね…」
隣にいるリアも驚いた顔をしてそう言った。
「ふふふ、本人に色々聞いてたりしてるから」
ドヤァ、と効果音が付きそうなくらいな顔をする和音ちゃん。
流石情報屋。凄いです。
- Re: 「音響に興奮するのが異常?笑わせないでよ」 ( No.32 )
- 日時: 2016/01/31 16:50
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「音響に興奮するのは異常?笑わせないでよ。音響は興奮するものよ。知らないなんてかわいそうに」
EpisodeC 翠川星香 Ⅳ
「はぁー、ライブ行きたーいッ」
和音ちゃんから情報を貰って数日が経った。
毎日のように「ライブに行きたい」を連呼するリア。
ライブは来週末にあるようでチケットはすでになくなってしまっているらしい。
「リアそればっかりだね〜。この頃は」
のしっと机に突っ伏すリアの背中に乗っかる。
「せーいー、重いよー。死んじゃうー」
そう言いながらもどこか笑っている雰囲気のリア。
「の割には笑ってるよ〜リア」
ふにふにと柔らかいリアの頬を背中に乗ったまま突く。
「星香ー、リアー。お客さんだよー」
じゃれ合っているときに、教室の戸のところからクラスメイトが呼んでいる。
「はーい」
和音ちゃんかな、と予想を立てつつリアから離れ見に行く。
「えっと、翠川星香ちゃん。だよね…?」
予想は大ハズレ。 でも…
「え、み、水上先輩……?」
私にとっては最高の来客でした。
- Re: 「音響に興奮するのが異常?笑わせないでよ」 ( No.33 )
- 日時: 2016/02/02 19:28
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「音響に興奮するのは異常?笑わせないでよ。音響は興奮するものよ。知らないなんてかわいそうに」
EpisodeC 翠川星香 Ⅴ
「水上先輩!?」
がたっ と音を立てて勢いよく椅子から立ち上がったリア。 その目は嬉しそうに輝いている。
「君が有栖川リアちゃん。で、良いんだよね?」
掛け寄って来たリアに微笑みかけながら聞く水上先輩。
少し掠れた感じの低音ボイス。 さらにこの見た目。こんなに近くで見れるなんて最高!
「えぇ! でもなんで私たちの名前知ってるんですか?」
そう聞きながらコテンと首を傾げるリア。
「和音が言ってたんだよ。あんまり詳しいこと言うと彼奴に殺されるから詳しい事は秘密だけどね」
クスッと笑って唇に人差し指を当てる。
和音ちゃんの事、呼び捨てにしているって言う事はそれなりに親密な関係なんだろうな。何て考えてしまう。
「で、今日来たわけはこれを二人に渡す為」
はい、と言って渡されたのは2枚の何かのチケット。
【 H.M I.R A.R 】と書かれたチケットのようなモノ。
「俺らのバンドのチケット。和音が『二人にあげたら絶対喜ぶから』って言ってたからさ」
ニコッと綺麗に笑う先輩。 先輩の渡してくれたチケットに書いてある【 H.M I.R A.R 】はきっとバンド名であろう。
「これ、いつやるんですか?」
「今週末。時間と場所はそのチケットに書いてあるから。よかったらおいで」
じゃあね、と軽く手を振って先輩は私達の前から去って行った。
- Re: 「音響に興奮するのが異常?笑わせないでよ」 ( No.34 )
- 日時: 2016/02/03 16:56
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「音響に興奮するのは異常?笑わせないでよ。音響は興奮するものよ。知らないなんてかわいそうに」
EpisodeC 翠川星香 Ⅵ
「せ、星ちゃん、ココ現実?夢じゃないよね」
「夢じゃない、夢じゃないよ。リア」
そう言うと ふぁぁぁぁぁぁ… と謎の不気味な声を出すリア。
「やったよ、今週末!!絶対行こうね、星ちゃんッ」
「当たり前じゃん! 私が行かないとでもいうと思ったか!」
思わないー。とクスクス笑うリア。
それにつられて私も笑う。
あぁ。早く週末にならないかな。
「星ちゃん!行こう!!!」
今日はいよいよ先輩たちのバンドのライブ当日。
開場は17時。開演は17時半。
少し余裕を持っていこう、ということでリアとの待ち合わせは16時。
会場が一駅先の所なので10分、20分くらいでつくだろう。そう考えながらリアと歩く。
「私ライブ初めてだから楽しみー」
「私は2回目かな〜。好きな声優アーティストさんのライブ去年行ったし」
「何ソレ、聞いてないけど、行くなら誘ってよ!」
そのあとは他愛もない話をして電車に乗った。 会場に着いたのが16時50分。まだ開場まで時間がある。
適当に辺りを歩いて時間を潰すことにした。
あまり来たことのない場所だから迷わないように相当遠くには行かずに。
そろそろライブが始まる。
私の人生を変えたライブが。
- Re: 「音響に興奮するのが異常?笑わせないでよ」 ( No.35 )
- 日時: 2016/02/03 19:52
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「音響に興奮するのは異常?笑わせないでよ。音響は興奮するものよ。知らないなんてかわいそうに」
EpisodeC 翠川星香 Ⅶ
「あと1分ッ」
会場で腕時計を見てソワソワとしだすリア。1分おきに腕時計を見ている気がする。
「あとちょっとだねぇ…」
「うん!!」
17時半ジャスト。水上先輩がボーカルを務めるバンド、【 H.M I.R A.R 】のライブが始まった_。
歌っている水上先輩の声が会場中に響き渡る。
程よく音が響く。その響きに何故か興奮してしまう。
何故だろう。なんてそんな事は聴いている時は思わなかった。
「よかったね!ライブ!!」
「めっちゃよかった!」
2時間ちょっとのライブが終わり、リアと家路につく。
ハッキリ言ってあんまり曲を聴くことに集中できなかった。
程よく響くあの音がとても気持ち良くって、そっちの方に完全に気を取られていたから。
「なんか、あそこの音響が凄い興奮した…」
思わず口に出してしまった一言。
それを聞いたリアがちょっと驚いたような、引いたような顔をして私を見る。
「私は興奮しなかったよ…?」
何だろう。この子。と気味悪いモノを見るような目で見られる。
「嘘だよー。音響に興奮するわけないじゃん」
「だ、だよね。星ちゃんがそう言う【性癖】の人じゃなもんね」
あはは、と慌てて弁解して笑う。
あの一言を発してから少しギクシャクしたような感じに成ってしまった。
- Re: 「音響に興奮するのが異常?笑わせないでよ」 ( No.36 )
- 日時: 2016/02/06 13:12
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「音響に興奮するのは異常?笑わせないでよ。音響は興奮するものよ。知らないなんてかわいそうに」
EpisodeC 翠川星香 Ⅷ
「じゃ、じゃあね…星ちゃん」
「じゃあね、リア」
今日待ち合わせたところからリアと別れて帰る。
私の発言の後から何となく話しかけずらくなり、二人とも一言も言葉を発していなかった。
「はぁ……」
重い足取りで電気の着いていない我が家へ帰宅。
両親は共働きで兄弟もいない。 だから帰っても一人の事が殆ど。
廊下、リビングの電気をつけるとやっと明るくなった。
「はぁぁぁぁぁ……」
今日何度目かの溜息を吐きながらソファーにダイブする。
もう何もやりたくない。 このまま寝ていたい…。そんなことを考えていたけど風邪をひきそうだったのでやめた。
むくっと起き上がり何か聴こう、そう思いお気に入りのCDを流す。
【 部屋に響き渡る音 】とっても心地いい…と言うよりも…【 気 持 ち い い 】
音響に興奮してしまう。 自分でも何でこんなに興奮するのかわからない。
【 自分で自分自身が気持ち悪い。気味悪い。そう思ってしまう】
- Re: 「音響に興奮するのが異常?笑わせないでよ」 ( No.37 )
- 日時: 2016/02/06 13:46
- 名前: 雨音 (ID: HKLnqVHP)
- 参照: http://「音響に興奮するのは異常?笑わせないでよ。音響は興奮するものよ。知らないなんてかわいそうに」
EpisodeC 翠川星香 Ⅸ
「んん…」
目が覚めたら冷たい床の上。 音楽は止まっている。
あの後すぐに寝てしまったらしい。
今日は月曜日。学校に行かなければいけない日。
「めんど…」
そう小さく呟いて起き上がる。
着替えたりする前にご飯でも作ろうかな、そう思い冷蔵庫を開ける。
卵とベーコンがある…べーコンエッグでも作ろうかな。
半ばうわの空でベーコンエッグを作り終え、さらに盛り付けて食べる。
制服に着替えて、今日必要な教科の教科書をカバンに入れる。
学校へ行ってリアと会ったが今日は一言も言葉を交わしていない。
いつもだったら好きな声優さんの話で盛り上がるけど、今日はリアと話す気になれなかった。
「星香ちゃん」
下校途中に呼び止められて振り返ったらそこには和音ちゃんがいた。
よく似た双子の姉。奏音ちゃんと一緒に。
「ライブ、どうだった?」
「最高だったよ!ライブ」
そう言っているわりには元気なさげな声を出してしまう。
「元気なさそうだけど、大丈夫?」
私でよかったら相談に乗るけど? と首を傾げる和音ちゃん。
「音響に興奮するのって…変、かな…」
ポツリと呟くように聞く。
「んー、変じゃないと思うよ?そういう【性癖】の人だっているし」
「【性癖】?」
「そう。【 音 響 性 愛 】って言う音響に興奮する性癖もあるし」
そうなんだ…和音ちゃんのその言葉で自分以外にも音響に興奮する人が居るんだ。と少し安心した。
そして、自分も【 異 常 性 癖 者 】だって言う事も分かってしまった____。
【 私が異常と化したわけは友人と行ったあるライブ。
そして気づいたのは和音ちゃんのとある発言 】
EpisodeC 翠川星香 fin