ダーク・ファンタジー小説

Re: アシナクシ。 ( No.23 )
日時: 2016/04/16 04:07
名前: 彩都 (ID: ZFblzpHM)  

「あなタ、ひとリボっちね?」
「煩い、何で私に付いて来るの?貴女は、何者なの?」
紫は、同じ姿である、黒い自分に話をかける、だが、返答は無い。
「はぁ、結局何者なのかしら……?私は何もしていないのに……」
そう言いながら、宙に浮く紫。
そしいぇ、黒い自分はとんでもない事を言った。
「ナンでひとヲコろさナイノ?」
はっ?今何て言ったのかしら?何で人を殺さないかですって?聞き取りづらいけど、言いたい事は分かった。
「そんなの簡単じゃない、何で『人を殺す』のよ?私は復讐を終わらせた、だから、もう、人を殺す事は無いわ──」
「それハチガう、ワタしもとイアナたはきづイテナいだけ、ほントうはヒトヲもっとコろしたイノニ……」
「はぁ?何を言っているか分からないけど、何で私がまだ人を殺さないといけないの?」
そう言うと、黒い自分は言った。
「かんたンダ、わすレテイないンダろ?アマネをコロしたトキ、かんじタハずだ……『コンナにひとをコロすのは、キモちいい』と……」
「止めて!」
頭を抱えながら、紫は言った、もう思い出したくないのに……思い出したくないのに……何で、コイツは思い出させようとする?ミステリーな事件にはさせたくない、そう思いながら、紫は言った。
「私はもう、人殺しはしない!だから纏わないで!」
そう言ってから、思いっ切り紫は逃げた。
「おまエハわたシカら、にげれナイ……」
黒い自分は、そう吐いてから、何処かへ消えた、その居場所は知らない……

「あぁ〜やる事が無いなぁ──幽霊って、本当、夏場以外、暇なんだね」
そう言いながら、空中で寝転がる紫、夏場は幽霊が一番出易く、一番驚かせれる季節、そんな極意を先輩幽霊から、紫は聞いていた。
大まかに幽霊といえども、この世界の幽霊と、紫達幽霊の世界は違う。
まず、特筆すべき所は、幽霊は基本成仏出来ないのだ、基本、事故現場、病室で何時も浮遊している事が多いのだ。
一応、紫の場合、『いじめっ子に復讐したい』という願いで幽霊となったので、いじめっ子を何時でも、どんな様に殺せる様自由に移動する事が出来るのだ。
そして、他にも特筆すべき点がある、ポルターガイストだ、ポルターガイストは、若い幽霊には、コントロールが難しいのだ、逆に熟練の幽霊は、ポルターガイストを自由に使う事が出来る。
だが、紫は天音等、いじめっ子グループに乗り移って、自殺させただけだが。
なので、ポルターガイストは使っていないのだ。
だが、今更そんな説明をしても無駄なのだが。
そして、寝転がりながら欠伸をしていると、黒い自分が現れた。
「あら、どうしたの?数ヶ月も居なかったのに──」
そう言った瞬間、雪が降って来た、懐かしいな、こんな時期に私は殺されたんだよなぁ……とか、思っていると、黒い自分は笑った。
「おいオイ、ワタシはてれビモみなイノカ……」
テレビ?どういう事だろう?そう思いながら、家電量販店のテレビを見る。
すると、『下半身が無い遺体が発見された』、というニュースが流れたのだ。
えっ?何コレ?まさか、コイツが……?
「そうだ、ワタしがシタが?」
「ってお前かい!何で人を殺した!?おい!?」
「おイおイ、おちツケ……わたシハオマエのねがイヲかなえタダけだ……」
「私はもう無駄に人を殺したりしないの!」
すると、黒い人物は、紫の肉体を通ると、紫は、普通の眼から、精気を失った、操られた様な眼になった。
「はい……もっと人を殺します……」
そう言って、ふらふらと、移動した……そして、黒い自分は笑う。
「わたシガした、とイッタが、ワタしがころシタとはいッてイナイ……さぁ、コワれろマリカワユカリィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!」
ケラケラケラ、まるで壊れた様な笑いをする黒い自分、完全に狂気だった……

「……あれっ?私は?何でこんな所に?」
そう言いながら、周りを見る紫、頬には、べったりとした、赤い粘液──血液だった──左手で左頬の粘液に触れる、暖かい、まるで人肌の様な──人肌?
周りを確認するのは、簡単だった、周りは、下半身が無い遺体だらけ!
そして、左手の粘液を恐る恐る見る──血液に驚く紫。
「きゃあぁあぁぁぁあぁぁぁあぁああぁ!!!!!?????」
後ろへ後退ろうとする、だが、幽霊なので浮いているので後ろに行かない。
「何よコレぇぇぇ!?私がしたの!?何で!?私は何もしていない!」
そう言うと、黒い自分が現れる。
「ほぅ……オマえはこのサツじんをシタことガナイってイッテ、サツじんジケんからニゲようトするのカ?」
「えっ?どういう事?その言い分だと、私が──」
そう言って、紫は言った。
「私が、この人達を殺したの……?」
そう言うと、黒い自分は笑った、壊れた人形の様に……
「アハハハハッハハハハハハハハハッハハハハハハハッハハハハハ!!!!!!!セイカイだ、ジブん!そう、ジぶんでコレだけのニンズうをコロしタンダ!」
そういう黒い自分に紫は驚く、そんな訳が……だが、手には、人を刃物で殺した感覚があった……どういう事よ……私は気を失っているかもしれない間に何があったの!?
そう思いながら、笑っている、黒い自分に話を聞こうとしたが、無駄だった、まるで話を聞く素振りさえ無い。
そして、紫は頭を抱えながら、発狂して、気絶してしまった……笑い終わった黒い自分は言った。
「あーあ、アッケないコト……もっと、コワれてよ……アハハハハハッ!!!」
そう言いながら、誰も居ない──幽霊と死体はあるが──高架下で狂気の笑いが響いた……それを目撃した人は居なかった……

Re: アシナクシ。 ( No.24 )
日時: 2016/04/16 06:38
名前: 彩都 (ID: 9i/i21IK)  

「──ん?此処は……?」
紫が目覚めた時、空に浮いていた、確か自分は、大量殺人をして、その場で気絶した筈──そう思うと、吐き気が込み上げてくる、だが、幽霊なので吐けないが。
「ちょウシはどうダ?」
そう聞かれたので、紫は返答した。
「どうもこうも──調子なんて最悪よ、何で私は殺人をしたのかしら?黒い自分?」
そう言いながら、眼を細めていく、だが、黒い自分には聞いていなかった。
「オイおい……もうジきワタしとのキョうめイハんのウがオキるコロだろウナ……」
「えっ?きょうめいはんのう?なにそれ?」
あれっ?今、何かおかしかったような……?少しだけ不思議に感じた。
「おまエハもうすグワたしときょうめいする……」
「きょうめい……?」
段々相手との会話も鮮明に分かってくる……だが、自分の会話だけが不思議に感じられる。
「きょうめいって何?あなたと何かかんけいするの?」
「入レ替ワリ」
即答した、一体何なんだ、入れ替わりとは?
「何よ……それっ!?」
「簡単ダ、オ前ハ、段々と人を殺した私になるんだよ……見た目も汚くなっていくぜぇ?」
そして、紫は自分の顔を事故防止用の鏡を見て、驚いた。
髪が段々とワカメみたいに縮れていった、そして、目も段々と暗くなっていく、まるで目が点状態になる。
「ナンナンダコレハ!?私ハドウナルンダ!?」
段々と、自分の声も聞こえていかなくなる……すると、黒い自分は自分と同じ姿になっていく……
「お前は私となる、人を殺さないと生きていけない幽霊に──闇の幽霊になりなぁ!」
絶望した思いで考える、まさか、私は善の心から悪の心に発展しているという事か……?つまりワタシハワクノミチニススメト……?
ふとした絶望が紫を襲った、泣き喚く、何度も何度も泣いた……だが、自然と殺意だけは出てこなかった、その代わりに黒かった自分が、腰から下を切り取る『アシナクシ』になっている事に気が付いた。
そして、人を殺す『アシナクシ』には、仲間が居る、だったら、その『仲間の知り合い』の将人を仲間にして、戦わせたらどうだろうか?そう思って、紫は将人に近付いた。
紫は悪の自分を倒す為に仲間探しをしていたのだ、ただ単にその標的が将人だったという事だった。

「とイウことダ……」
「成程な……つまり、お前はいじめっ子を殺した後、最後に殺したのは、その話の中で出てきた大量殺人だけって言う事か?」
「そうダ……だかラ……アクノわたシをたおしテクれ……たのム……!」
『アシナクシ』はそう言って、土下座した、今頼れるのは、将人、麻美子という訳か……
「話が読めないけど、つまり『アシナクシ』が言いたいのは、『自分は殺していない、殺しているのは悪い方の『アシナクシ』』という事でいいんだな?」
「あァ……」
すると、将人は言った。
「だったら、悪い方と組んでいる『俺の知り合いの仲間』って誰なんだ?」
確かに、そこには、私も悩んでいた、麻美子はそう思いながら、聞いた……
「アイてがクンでいル、おまエノしりアイは──」

同時刻──その頃警察では──
「先輩、ちょっと話が、『アシナクシ』にやられた娘の事なんですが……」
「ん?どうしたんだ?何か母親について、掴める情報があったのか?」
「いえ、ちょっと……娘の歯形と遺体の歯型が一致しないんですよ」
「おい、それってどういう事だ!?」
「えぇ、それでですね、逆に妻の方を試したんですよ、でしたら、歯型がピッタリ一致しましてね……」
「おいおいおいおい……それってつまりぃ……」

警察の先輩と『アシナクシ』は場所は違えど、ハモった。

「おまエノしりアイは、マノユウコ……お前の幼馴染みだ」
「間野悠子は死んだのではなく、死んだのは、母親の方ってか?行方不明は娘の方ってか!?」

その発言を聞いて、警察の後輩は言った。
「はい、そうです、行方不明は間野悠子、死去したのはその母親、という事になります」

その発言を聞いて、将人は言った。
「えっ……?いやいやいやいや、それは無いだろう?だって、悠子は死んでるんだから……だって、俺だって、その遺体は見ているんだぞ?裕子な筈が……」
すると、とある事を思い出した、『てか、悠子もそのお母さんも似てるなぁ〜まるで双子の様だ』、自分は前々からそう思っていた所があった、だったら、おばさんを殺したのは……
「それハ、マノユウコじしンガころシたんダよ……」
その発言を聞いて、将人は、発狂する。
「何で何で何でだよ!?悠子は優しかったじゃねぇか!?どういう事なんだよ!?」
「それは私達では知らないわよ!」
麻美子が叫ぶ、だが、将人は止まらない。
「何で何で何で!?何で悠子が!?」
その場で蹲(うずくま)る将人。

そして、警察の後輩が言った。
「まぁ、見た目がとても似ているから姉妹と見られていたそうですよ?凄いですよね遺伝子って」
「確かにな……まさか間野悠子が行方不明だったとは……」

そして、蹲る将人に対して、麻美子は立ち上がる。
そして、胸倉を掴んで言った。
「何時迄も泣いてんじゃねぇ!何でそんなに泣くんだよ!?幼馴染みなんだろ!?だったら、助けてやれよ!何で助けずに殻に篭ってうじうじしてやがる!?男だろ、前に進めよ!という事で、『アシナクシ』!」
「ハイィィ!?」
いきなりでビビる『アシナクシ』。
「悪いお前が居るなら、私は倒しに行く、何処に居るんだ?」
「……このヤマのおくのケンさくゲンばのとんネル……」
「そうか、では、一人で行って来──」
すると、麻美子の服の裾を掴む将人、泣きながら、将人は言った。
「俺も連れて行ってくれ、幼馴染みが悪い事をしたら、止めるのが幼馴染みだろ?」
そう言うと、麻美子は笑う。
「それが男ってもんよ!」
頭をグリグリする麻美子、痛がる将人に『アシナクシ』は思った。
(これデわたシハたすかルのか……?でも、イマハこいツラにまかセルしかナイ!)
そう思いながら、『アシナクシ』は、二人を山に連れていった……
CHAPTER 7 終了 CHAPTER 8 に続く……