ダーク・ファンタジー小説
- Re: アシナクシ。 ( No.37 )
- 日時: 2016/07/02 14:58
- 名前: 彩都 (ID: iXLvOGMO)
LASTCHAPTER 10 死んでしまえば皆同じ
貴方は生きていますか……?こんな不条理な世界を楽しんで生きていますか?
生きているなら良いんです、そう、私も早く『その場所』に立って死にたいです──
「あぁ……暇だなぁ……何でこんなに暇なんだ──」
死んだ将人はそう呟きながら自宅の湯船に浸かる──そこには誰も居ないが──
まぁ、幽体の将人に湯船の温度等分からないが──
そして湯船から離れて少し浮遊する、幽体とは楽な物だ、そう思いながら悠子と戦った畦道山に辿り着く──
(懐かしいなぁ、もう何ヶ月が経ったんだ……?いや、まだ一ヶ月か──)
そう思いながらあの戦いを思い出す──まさか闇の『アシナクシ』がまだ潜んでいたか、それを知った時は驚きだったが──だが、それを知ってももう遅いが──
まぁ、もう良いんだ──もう俺は自由だからな──
今はもう居ない悠子の事を思い出し、涙を浮かべる。
将人の葬式の時、悠子は現れた、そして将人は追いかけたが、もう居なかった──そして闇の『アシナクシ』の『匂い』さえも無かった──まるで『この街から元々居なかった』様に──
「さぁて、もう麻美子さんも居ないんだ──そして『紫』も──」
流し目で横を見る──もう居ないんだ、この『街』から──
あの後真美子さんは忽然とこの街から消えた──そして『アシナクシ』も『やミの『アシナクシ』ヲさがしにいク』と言って、此方も消えた──
そう、この街にいるのは、被害を闇の『アシナクシ』に受けた自分だけだった──まぁ、誰も自分の事は簡単に忘れさせられるだろう──それは少し悲しいが。
まぁ、どうせ忘れさせられるんだ、放って置いても良いだろう、どうせ自分だし。
そして電車の中に乗り込む──乗り込むと言うより、入り込む、が正しいか?──そしてどっかのおっさんの新聞を覗き込む、一通りその新聞を見てみたが、この街の『アシナクシ』事件はもう取り上げておらず、自分の記事でさえもう存在してなかった、そうこれが現実なのだ、もう忘れ去られた存在、それが今の自分、憩将人だ。
まぁ、もう取り上げられるのは辛かったし、まぁ、良いんだけれどね。
次は自分の学校だ、夜の学校と言うのは些か怖い、その理由は昼の学校とは違い、雰囲気が変わるからだ、まぁ、夜の学校の方が暗さが激増していて怖い、という理由もあるが──
そして自分の席を見つけて、その席に座る、懐かしい、知り合いが死んで悲しんで、気絶したっけ?それは今では恥ずかしい想い出の一つだ。
そんな想い出も『自分』という憩将人が消えれば元も子もないが──
そして学校を周って気付く、校長室だ、校長室に入ってみる、そもそも何も悪い事をした事が無いから入った事が無いが、少し気になっていた場所の一つだった、そして中に入る。
「失礼しまーす……って誰もいないから言わなくても良いんだった……」
そう自分でボケながら中に入る、そこには真美子が貼ったと思われる札があった。
「此処にも貼ってたんだ……そういや此処の中学の校長ってオカルト信じてなかった気がするんだけど……まぁ、良いか」
そう呟きながら色々見回る、戸棚の中には個包装されたお菓子が入っていたりする、それは本当なのだろうか?そう思いながら見てみる、物体をすり抜け、見てみる──何と真っ暗で何も見なかったのだ、でもこういうのは七不思議並みに不思議なモノなんだよなぁ……そう思いながら戸棚から離れる、そして分かった事が一つある、この学校──お札貼り過ぎ……
まぁ、良いんだけれどね、そこ迄『アシナクシ』来て欲しくなかったのが切に分かる……
「さて、次は何処へ行こうか……」
それを考え、少し辿り着く、次は……悠子の部屋だ──
「えーと……何だこの破片は……?ブタの貯金箱かな?そして衣類がボロボロ──一体何があったんだ……?」
悠子の部屋に来て開口一番がそれだった。
衣類は自分の服を母が着た為破っただけだった。
「……成程、貯金箱は金を回収しただけか──でも衣類を破る理由が掴めないなぁ……まぁ、いいか、どうでもいいし」
そう言いながら興味を無くして部屋を出る。
まぁ、今日は色々行って探索も疲れて、どうしようか?まぁ、もう二週間もすれば49日が成立する、まぁどうでもいいけれどね。
そしてまた浮遊する、将人は呟く。
「早く現世から消えてぇなぁ……」
そう呟きながら将人は空を見る、幽霊には『寝る』と言う行為が出来ない、何故なら『人間の肉体を有していないから』だ、人間の肉体を持っていると脳の関係で睡眠を取ってしまうが、人間ではなく幽霊なので睡眠や食を取る必要はなくなってしまう。
まぁ、現世なんか勝手に消えるけどなぁ……そう思いながら空中で寝転がる、少年はのんびりと浮遊する──
今生きている者も死んでいる者も結局は無に帰る、それは仕方無い事だ、それは本当に『仕方無い』事なのか?もっと運命に抗ってみませんか?抗って抗って手に入れるモノは何ですか?それは──
LASTCHAPTER 10 完
『アシナクシ。』 第一部 完 『アシナクシ。』 第二部に続く……