ダーク・ファンタジー小説

Re: Lost School ( No.16 )
日時: 2016/07/12 21:24
名前: ロスト (ID: wJ5a6rJS)

 ?月?日時刻不明 ??? point:???

 この世には人類が足を踏み入れることが出来ない領域が存在する。それを私たちは『異世界』と呼んでいる。
 だが、そもそも『異世界』という語は人間が分類体系を作り上げる際の構造論と関連してるのだ。我々人間が自己中心的世界観で内部と外部を二項対立的に認識する場合、外部となるものが『異世界』なのである。逆に、内部となるものが『現実世界』だ。
 よって、様々な程度で境界を挟んで『異世界』が存在する。

 例えば、今君が高い壁に囲まれ、外部との連携を完全に断たれたAという村に住んでいたとしよう。この場合、君にとってA村が内部であり、A村の外部、つまりA村の壁の外にある別の村や町、海や森林などはすべて『異世界』ということになる。
 現代の社会では最初に述べた領域が『異世界』の定義であるのだが、実際のところ『異世界』とは『自分にとって未知の世界』を意味するのだ。
 つまり、『異世界』は無数に存在し、且つ個人によって数も場所も異なるのである。
 このように『異世界』を捉えると、A村に住む君にとってB村の住人は『異世界人』ということになる。

 ところで、今度はこんなことを考えてみよう。
 君はA村の壁を壊し、Cという森で野宿をすることにした。この時、君は今まで『未知の場所』であったCという森を認識——つまり『既知の場所』に変えた。
 この時、何が起こるのか。
 簡単なことだ。今まで『異世界』だったCという森が『現実世界』に変貌する。つまり、『異世界』が1つ消失したということだ。
 そう、『異世界』は『現実世界』にも成りうるのだ。

 もちろん、逆もありうる。
 もし君が記憶喪失を起こしたとしたら、君にとってA村は『未知の場所』へと変貌し、『異世界』となる。

 要するに、『異世界』と『現実世界』の境界線とは、人間の『認識』によるものなのだ。
 言い換えれば、『未知』と『既知』の違い。それこそが『異世界』と『現実世界』を分けるのである。

 最後に、私の言いたいことを示しておこう。
 君が『異世界』を消滅させたいのなら、その『異世界』を『既知の世界』に変えてしまえばいい。そう、認識するのだ。どんな形でもいい。その場所のことを知るのだ。
 『既知』の定義は場所によって異なる。森林や海など、自然界のものはただ認識するだけでいいのだが、人工の建造物や都市などは違う。その本質を知らなければ『既知』とはならない。
 いずれにせよ、認識することで『異世界』は『未知の世界』から『既知の世界』へと変わり、消滅する。そして、新たな『現実世界』が生まれるのだ。
 しかし、それは『異世界』にとって死を意味する。きっと『異世界』は君の『既知』を覆そうとするだろう。例えば、君を殺したり——

 その時君がどう動くか。私はそれが楽しみだ。