ダーク・ファンタジー小説
- Re: Lost School ( No.25 )
- 日時: 2016/03/16 20:44
- 名前: ロスト (ID: WtPXn5LU)
同日同時刻 同所 point:楠炎真
先輩が玄関のチャイムを鳴らすと、中から返事が返ってきた。どうやら紅崎は在宅中のようだ。繰り返し言うが、紅崎の印象は『異様』。だから、こんな普通の光景にさえ驚いてしまうのだ。
「もしかして、あんたさん緊張してるんですか? 表情が固まってますよ」
「き、緊張なんてしてませんよ。ただ……」
「ただ?」
先輩は訝しげな表情でこちらを見つめてくる。
「……いえ、なんでもないです」
「変な人ですね。ま、いいですけど」
深く追求してこない性格は本当に助かる。俺に興味がないだけというなら少し落ち込むが、それでも先輩のこういうところは助かるのだ。
なにせ、紅崎の『異様』さとこの『普通』の状況とのギャップに驚いているだなんて、言えるわけがないのだから。
少し経って、ドアの向こうからパタパタという音が聞こえ、鍵が開いた。
「沙織、ごめんね。さっきまで寝てたから髪型が……えっ!?」
ドアを開けながら出てきた紅崎は俺を見るなり、思考が停止したように固まった。
長い黒髪を後ろで1つにまとめ、そのまとめた束を肩にかけて前に垂らしている。前髪も長く、左側はかき上げているが右側は右目を隠すように垂らしている。凛とした顔立ちをしており、間違いなく可愛いの部類に入るだろう。身長も俺より拳1つ分低いくらいで、彼女に出来たらどれほど自慢出来るだろうか。
さて、ここまでは彼女の『普通』の部分だ。ここからが俺が『異様』だと言う所以である。
まずは、隠していない左目。日本人ではまず見かけない赤色。カラコンなんかではない。透き通るような赤色をしているのだ。それから、彼女の纏っているオーラ。不思議な威圧感を覚えるそのオーラは俺でも分かるくらいだ。彼女自身、他人を拒絶しているわけではないのだろうが、それでもクラスメート以上の関係にはなれないだろう。
ひょっこり顔だけをだしている彼女だが、それが丁度外の闇と家の中の光の境界にいるため、余計に不気味さが増す。
さて、さっきから固まっていらっしゃる紅崎さんだが、未だに動く気配はない。どうやらまだ現状を理解出来ていないようだ。
先輩はというと、クックックッと必死に笑いを堪えている。もしかして、俺が来ることを伝えてなかったのか?
すると、突然もの凄い勢いでドアが閉められ、家の中から激しい物音が聞こえてきた。
遂に我慢できなくなったのか、ケラケラと笑い出す小悪魔を横目に、俺は呆然と立ち尽くしていた。