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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛 ( No.1 )
- 日時: 2016/01/03 16:25
- 名前: 吉田 網張 (ID: jV4BqHMK)
1.赤蜘蛛
静まりかえった裏路地。散乱したゴミに、鼻をつく血の臭い。数人の男が倒れているその空間に、ただ一人立つ、無傷の男。凍てつく氷のような彼の双ぼうが、その暗闇に異色の雰囲気を放っていた。
「……」
そこに近づく二つの人影。その者たちは、視界に広がった凄惨な光景に眉1つ動かさず__それどころか一方は明るい笑顔を浮かべていた。
「いやいやぁ、遅れちまいましたー。意外と手こずってェ」
この状況では不気味でもある笑顔を浮かべた男が、190以上ある長身を屈めて軽快に言った。性格を表すかのようなオレンジ色の短髪と黄色の瞳に絶やさない笑顔は人なつっこそうな印象を与える。しかし頬にある大きな真っ赤な傷が、常人とは違う、彼の黒い部分を象徴していた。
その言葉に、路地に立つ男は寄りかかっていたコンクリートの壁から背中を離して、心底苛立った表情を浮かべた。そして、ギラつく茶色い目で、二人を睨み付ける。
「チッ、アレ位の仕事もできへんのか、クズが。俺を待たせるなと、何度言えば分かるんや」
「……女子は男を待たせる権利がある」
腕を組んで黙っていたもう1人……異国色漂う中性的な凛々しい顔立ちの女性は、苛立ちを隠そうともしないその男の様子に苦笑いを浮かべ、臆することなくいい放った。
「んな権利、俺に通用せぇへんわ」
そう吐き捨てて、ゆっくりと歩き出す。その姿には、年若い見た目にあわず、重苦しい威圧感が漂っている。
「それに、クソ竜門は男やし」
路地を出る彼のそのあとに、二人も続く。
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